ニュージャージー・スタンダード石油会社の史的研究―1920年代初頭から60年代末まで の感想

内容は詳細をきわめているが、対象期間が19世紀末から1960年代末に限定されている点は残念。現在までを含めたエクソン・モービル社の研究を希望する。
著者による論証、実証の筆運びには大いに教えられるものがある。ただし、取り扱う時代乃至対象によっては十分に解明されているとはいえない点がたまに目につく。例えば、最終章の石油化学の分析などがそうである。
本書の特徴は、著者が非常に慎重なスタンスを貫いていることにある。この点は学者としては尊敬に値するが、もう少し大胆な論理展開乃至推論を押し出してもよいのではないかと思われる。