靴の話―大岡昇平戦争小説集 (集英社文庫) の感想
参照データ
タイトル | 靴の話―大岡昇平戦争小説集 (集英社文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 大岡 昇平 |
販売元 | 集英社 |
JANコード | 9784087520491 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
戦場で死線をさまよった人にしか書けない文章が並んでいる。どのページのどの一行からも、体験に根ざした確かさが伝わってくる。誇張やごまかしは微塵もない。登場人物の心理描写も同様で、胸に迫って痛いぐらいだ。
「出征」「暗号手」「襲撃」「歩哨の眼について」「捉まるまで」「靴の話」−どの短編も戦争と人間、そして、死について教えてくれる。
「出征」「暗号手」「襲撃」「歩哨の眼について」「捉まるまで」「靴の話」−どの短編も戦争と人間、そして、死について教えてくれる。
戦争体験を文章で書かれた方の本は何冊か読みましたが、個人的には客観性ある文章で心地よく読めます。が、当然戦争体験者で文章を綴らなかった方の方が多いわけで、主流ではないのでしょうけれど、この冷静な目が私好みです。その中でも恐らく今までで1番麗筆な文章だと感じました。
いくつかの短編を再編集したものです。大岡さんの実体験に基づいた徴兵から出兵、勤務を経て米兵との邂逅、そして捕虜としての生活までを順を追って短編にした作品集です。そしてそのどれもが、著者の心を厳密にできるだけ客観視して綴られたもので、臨場感に溢れつつ、その場の心の動きを冷静にしたためられていて、素晴らしかったです。
どの作品も心に残るのですが、「出征」の妻との品川駅での別れの場面の心情はとてもリアルでしたし、「襲撃」での小林衛生兵の人柄とその最後の場面と言葉は不条理の極みだと思いますし、「捉まるまで」の米兵との遭遇と撃たなかったことへの心の分析には説得力がありました。また、表題作「靴の話」の些細な装備の不自由が発端となっている軍体内での生活が垣間見れて良かったです、とても臨場感がありました。体育会系の延長線上の、もっとグロテスクな世界だと思います。
中でも「襲撃」の中の一文、
「政治は尽く嘘であるが、嘘から出たまことが重なって生活と歴史を作るのである。」
は前後の文章と相まって突き刺さる文章でした。
戦時体験に興味のある方にオススメ致します。
いくつかの短編を再編集したものです。大岡さんの実体験に基づいた徴兵から出兵、勤務を経て米兵との邂逅、そして捕虜としての生活までを順を追って短編にした作品集です。そしてそのどれもが、著者の心を厳密にできるだけ客観視して綴られたもので、臨場感に溢れつつ、その場の心の動きを冷静にしたためられていて、素晴らしかったです。
どの作品も心に残るのですが、「出征」の妻との品川駅での別れの場面の心情はとてもリアルでしたし、「襲撃」での小林衛生兵の人柄とその最後の場面と言葉は不条理の極みだと思いますし、「捉まるまで」の米兵との遭遇と撃たなかったことへの心の分析には説得力がありました。また、表題作「靴の話」の些細な装備の不自由が発端となっている軍体内での生活が垣間見れて良かったです、とても臨場感がありました。体育会系の延長線上の、もっとグロテスクな世界だと思います。
中でも「襲撃」の中の一文、
「政治は尽く嘘であるが、嘘から出たまことが重なって生活と歴史を作るのである。」
は前後の文章と相まって突き刺さる文章でした。
戦時体験に興味のある方にオススメ致します。