ポストコロニアリズム (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトルポストコロニアリズム (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者本橋 哲也
販売元岩波書店
JANコード9784004309284
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学

購入者の感想

 「ポストコロニアリズム」は「脱植民地主義」や「植民地主義以降」と訳されることが多い。これを著者は「現在進行形の植民地主義」と解し、現代における植民地主義の影響を文化的な側面から考えていこうとしている。
 著者の問題意識の所在に異論はない。しかし本書の内容については、やはり「浅い」と言わざるを得ない。著者の問題意識の中心は、日本のポストコロニアリズムである。例えば「和人」によるアイヌの表象の問題から、「奪われてきたアイヌの歴史をどのようにすることができるか」という問いを設定し、その答えが「アイヌ自身が歴史の主体となる」「アイヌ自身が歴史の主人公として立ち現れること」では、あまりに抽象的にすぎるし、この程度の指摘はこれまでに数多くあった。現在はこれの具体的方法、つまりどのような「書き方」「語り方」が可能なのかが問題になっていると私は考える。
 また著者は本書の中で繰り返し「私たち」という言葉を使う。この「私たち」とは果たして誰のことか。本書の「あとがきにかえて」では、「この本を読んでいただいている読者の多くは「日本人」であるだろう」「日本人である私たち」といった表現が出てくる。こうした言説からは、著者の日本のポストコロニアル的現状への認識の甘さが浮かび上がっている。「日本語」というテキストを解するのは、日本の植民地支配の中で、「日本人」だけではなくなってしまった。アイヌや沖縄の人々、そしていわゆる在日韓国・朝鮮人など、「日本人」以外の人々も広汎に読者として存在しているのが、日本のポストコロニアルな状況である。こうした状況下で「私たち」という言説は、「私たち(日本人)以外」の読者の存在を無視してはいないか。現代とは「日本語のテキスト」において、「日本人」「私たち」という言説が等号で結ばれなくなっている時代なのではないだろうか。

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