刑事訴訟法 の感想
参照データ
タイトル | 刑事訴訟法 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 田宮 裕 |
販売元 | 有斐閣 |
JANコード | 9784641041523 |
カテゴリ | 社会・政治 » 法律 » 司法・裁判 » 一般 |
購入者の感想
近時の頻々な法改正にも関らず、田宮裕、松尾浩也を最後として、長らく東大系の学者による刑事訴訟法の基本書(単著)が出版されなかった。本書は久方ぶり(十数年ぶり)に出版される東大系の学者による基本書ということで、法学徒達の期待を一身に集めていたわけだが、その出来映えは「半分賞賛、半分残念」との印象である。
「半分残念」と感じる最大の原因は、その完結性のなさであろう。例えば、自白法則の根拠について、一般的な基本書であれば、虚偽排除説、人権擁護説、違法排除説といった諸説を一瞥した後、判例や自説に言及するところだろうが、本書ではそうした諸説が項目立てて説明されていない。従い、先に他の基本書で学習を済ませた者でないと、かかる諸説の存在を見落としてしまい、同法則に対する理解が不十分になる可能性があるのだ。他の様々な論点でも、同様の扱いとなっているか、或いは、他説に言及しない扱いとなっているため、「本書一冊で刑事訴訟法が理解できる」との代物では全くないという点を十分に了解した上で本書に取り組む必要があるだろう。
反面、それは本書の強みでもあり、既に、刑事訴訟法に対する一定の理解を獲得した者であれば、本書は判例に対するより深い理解を獲得するための材料となり得る。要するに、本書は「相当に読み手を選ぶ本」なので、田宮裕や松尾浩也の後継本を期待していた向きには如何にも物足りなく、他方、酒巻氏の骨太の言説に触れたい向きには好著と言えるのだろう。
「半分残念」と感じる最大の原因は、その完結性のなさであろう。例えば、自白法則の根拠について、一般的な基本書であれば、虚偽排除説、人権擁護説、違法排除説といった諸説を一瞥した後、判例や自説に言及するところだろうが、本書ではそうした諸説が項目立てて説明されていない。従い、先に他の基本書で学習を済ませた者でないと、かかる諸説の存在を見落としてしまい、同法則に対する理解が不十分になる可能性があるのだ。他の様々な論点でも、同様の扱いとなっているか、或いは、他説に言及しない扱いとなっているため、「本書一冊で刑事訴訟法が理解できる」との代物では全くないという点を十分に了解した上で本書に取り組む必要があるだろう。
反面、それは本書の強みでもあり、既に、刑事訴訟法に対する一定の理解を獲得した者であれば、本書は判例に対するより深い理解を獲得するための材料となり得る。要するに、本書は「相当に読み手を選ぶ本」なので、田宮裕や松尾浩也の後継本を期待していた向きには如何にも物足りなく、他方、酒巻氏の骨太の言説に触れたい向きには好著と言えるのだろう。
著者の田宮裕博士は刑事訴訟法学会の権威でしたが残念なことに1999年に逝去されました。しかし、長く学会をリードしてきた田宮博士の影響がすぐに消え去るものとも思えず、新判例や新法への対応改訂が期待できないという難点があるものの、なお、本書を読む価値は十分にあるとおもいます。
また、同書の著しい特長として、はしがきにもあるように、同書が「ペダゴーギッシュ(教育的)」な観点から執筆された「教科書」であることをあげることができます。もっとも、いわゆる内田民法ほどオリジナリティにあふれるものではありませんが、それでも、叙述はきわめて平易で、ときには笑いをさそってくれるようなフランクな語り口で「楽しく」読めてしまいます。また、豊富に盛り込まれた図解は、刑事訴訟法の理解には大きな助けになります。
刑事訴訟法について第一歩を踏み出そうとするとき、あるいはある程度勉強がすすんで、頭の中を整理したいときなど、幅広く活用できる一書として推薦できる「名著」といって差し支えないかとおもいます。蛇足ですが、どなたか優れた学者のかたが補訂して同書の命を未来につないでいっていただきたいと願わずにはいられません。
また、同書の著しい特長として、はしがきにもあるように、同書が「ペダゴーギッシュ(教育的)」な観点から執筆された「教科書」であることをあげることができます。もっとも、いわゆる内田民法ほどオリジナリティにあふれるものではありませんが、それでも、叙述はきわめて平易で、ときには笑いをさそってくれるようなフランクな語り口で「楽しく」読めてしまいます。また、豊富に盛り込まれた図解は、刑事訴訟法の理解には大きな助けになります。
刑事訴訟法について第一歩を踏み出そうとするとき、あるいはある程度勉強がすすんで、頭の中を整理したいときなど、幅広く活用できる一書として推薦できる「名著」といって差し支えないかとおもいます。蛇足ですが、どなたか優れた学者のかたが補訂して同書の命を未来につないでいっていただきたいと願わずにはいられません。