逸脱する絵画 (20世紀芸術学講義) の感想

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参照データ

タイトル逸脱する絵画 (20世紀芸術学講義)
発売日販売日未定
製作者宮下 誠
販売元法律文化社
JANコード9784589025784
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

「20世紀美術は難しい」「抽象絵画は理解出来ない」…21世紀に突入した今でも尚、こうした声がよく聞かれる。
そこで、この「難解な」20世紀絵画を解り易く、手厚く講義してくれるのが本書なのだ。

本書の特色は「講義」と題されている通り、全ての章が講義形式で書かれている事だ。
依って、文体も論文調ではなく口語体、時折雑談や冗談を交えながら展開し、然も、多数掲載された参考文献や図版の数々も、まるでプリントを配布してくれるが如く…である。
本書を読んでいると、まるで自分が教室で人気講義を聞いているような気分にさせられる。
そして、そんな臨場感に満ち溢れた本書は、かの有名なマネ《草上の昼食》を以って幕を開けるのだ。

《草上の昼食》が何故あれ程のセンセーションを巻き起こしたのか、クールベ《オルナンの埋葬》がサロンに突き付けた挑戦とは何だったのか、セザンヌの作品の何処が斬新だったのか…。
こうした問題提議と解説は、もしかしたら既に近代芸術に詳しい方にとっては甚だ凡庸に感じるかもしれない。
然しながら、本書はこうした題材を丁寧に扱いながら、その新しさや視点、更には発想等の変遷が、愈々その後に続くキュビズムや抽象絵画に繋がっていく事を具体的、且つ実証的に語り尽くして行くので非常に解り易く、改めて「近代絵画の見方」を教えられたように思う。

取り分け、正しく「目から鱗」という新鮮さを感じたのは、デュビュッフェに言及した「第16講義」である。
この章は、著者の所謂「与太話」から始まるのだが、この雑談には、実は写実性と抽象とが謂わば「紙一重」であるという絶妙な結末が待っている。
更に加えて、私達を時に悩ます、あの《無題》という題名…即ち、タイトルの意義についても興味深い論述を展開しているのだ。
この一章を読んだだけでも、かなり「20世紀絵画」に近付く事が出来る…そう言っても過言ではなかろう。

但し、本書を読む上で常に念頭に置いておかなければならないのは、著者はパウル・クレーの研究者であり、然も、本書の当初の構想はクレーを中心とした書籍だったという事である。

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