刑法総論 の感想

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参照データ

タイトル刑法総論
発売日販売日未定
製作者高橋 則夫
販売元成文堂
JANコード9784792319922
カテゴリ社会・政治 » 法律 » 司法・裁判 » 刑法・訴訟法

購入者の感想

 高橋先生は、行為無価値の先生だといわれています。しかし、典型的な行為無価値論−不能犯について具体的危険説をとる、因果関係について相当因果関係説をとる、故意について構成要件的故意を認め、具体的事実の錯誤につき、法定的符号説をとる……といった立場ではありません。
 先生自身は、行為無価値論と結果無価値論の対立について、結構ナンセンスだと考えているようで、結果無価値論的な立場をかなり取りいれています。たとえば、不能犯について、修正された客観的危険説をとったり、因果関係について、客観的帰属論をとったりしています。
 そのような柔軟な立場を、「行為規範」「制裁規範」の発動場面の違いから説明しようとしている、というのが本書だと思います。実務=行為無価値に似た考え方だから、行為無価値の先生の高橋先生の本を…理由で本書を選ぶと、痛い目を見ます。というか、見ました。受験対策という観点からは、基本刑法を選んだほうがいいようにも思います。「制裁規範」というワードは、おそらく答案上では使えないと思います。

 もっとも、ガチガチの体系書で受験対策には役に立たないというわけではありません。
 まず、刑法の重要概念である「実行行為」について、とてもくわしく書かれています。実行行為の開始=実行の着手=未遂犯成立、実行行為を共同していなければ、共同正犯は成立しない(共謀共同正犯否定論)といった実行行為による統一的な理解から、条文ごとの実質的根拠から未遂犯の成立、共同正犯等を考えていくアプローチに変わっていっていることについて、くわしく説明されています。これは、学説史というような部分もあり、「学説なんて…」と嫌になるところもあるのですが、各論点の問題の所在を把握するには避けては通れないところだと思います。
 また、判例集並みに判例について詳しくかかれており、使い勝手がいいです。事案の説明、長めの判旨の引用、先生による一言コメントという感じです。シャクティパット事件なんかは、一審の立場から説明されています。
 あとは、定義をしっかりとされている点やレイアウトの見やすさもおすすめできる点かと思います。

行為無価値の本で刑法総論では最先端ではないでしょうか。これからは主流になるでしょう。新・新過失論も受け入れられると思う。

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