基本判例に学ぶ刑法各論 の感想

登載判例は102件。
先に総論が刊行されていましたが、各論も出て刑法分野が揃いました。

総論でなされているレビューと若干かぶりますが、特徴は以下の通りです。

・取り上げられている判例は百選とほぼ同様
よって、取り上げられている判例だけを見ても、百選の代替ともなり得ます。

・著者は百選と異なり山口先生の単著
百選はオムニバス形式で、著者によっては学説上の立場が一貫しないこともありますが、
本書は山口先生で立場は一貫しており、学説上の立場に悩まされることはありません。
よって、まさに百選の悩みを解消してくれるといえます。

・「新判例から見た刑法」との相違点
両書は山口先生の単著である点は似ています。しかし以下のような相違点があります。
「新判例」はテーマ別、総論各論で１冊（全体の厚さは相当薄い）、
テーマは決して多くない。（財産犯でも、横領・背任罪の項目自体がなかったりします）

本書はその逆です。
判例別に記述されているので、それぞれの判例の関係性を読み取る必要があります。
しかし、分量は総論と各論を合わせると相当の厚さになりますし、論点は網羅性があります。

以上より、百選の代替としても使えるほどの良書として、星は５で評価します。