香水─香りの秘密と調香師の技 (文庫クセジュ) の感想

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浮ついたところがなく、本当にプロの人が香水を作る過程においての、専門的な話です。

私にはほとんど難しかったのですが一つだけ、慣れた香りを人は好む、だから新しい香りはどんどん皆にかいでもらわないと好きになってもらえない・・の内容に納得しました。よくデパートで、店員さんがムエットを配っていますが、ああいうのを手にとって自分の中に嗅覚の記憶を増やしていけば自分の香水を選ぶ基準も広がっていくんだろうなと感じました。

エルメスの専属調香師として活躍している著者の、香水に向き合う真摯な態度が、鮮烈に伝わってくる作品です。
香水の歴史、調香師の訓練や香水のマーケティング・知的財産権保護など、香りを取り巻く様々な世界を正面からしっかり分析しながら、その語り口の豊穣さ瑞々しさは、珠玉のエッセーのようでもあります。

臭覚という原初的な感覚が、香水という芸術作品を紡ぎだす過程、特に著者の代表作『地中海の庭』の創作プロセスには、その物語性が情景として浮かびあがってくるような、神々しささえ感じました。

この本を読んで、香水を纏う喜びが、より一層深くなったような気がします。0