ドキュメント パナソニック人事抗争史 の感想

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タイトルドキュメント パナソニック人事抗争史
発売日販売日未定
製作者岩瀬 達哉
販売元講談社
JANコード9784062194709
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

私は、現在も会社勤めですが、過去パナソニックに10数年勤務した経験が有ります。
自己都合ではなく、パナソニックの一方的な都合で、離籍(退職ではない)となりました。

本書は二日で読み切りました。文章表現が平易で、恐らく、若い人でも興味深く読めると思いますが、特に現パナ社員、
元松下社員の方なら、是非一読する価値が有ると思います。

本書を読んで何より呆れ、怒り、無常感がこみ上げたポイントは
1)松下幸之助創業者逝去、わずか4年後に、松下正治会長×谷井昭雄社長の暗闘の結果により、森下洋一社長に
移行したが、この時点でもう、パナ・松下の崩壊が始った事。
  ⇒例)森下は90年代後半時点で「これからはブラウン管の時代だ」と錯誤した!
      だが誰もそれを指摘しない異常な状態が継続された。
2)本書に書かれている経緯、事情を「トータル」で知っている経営幹部・役員が殆どいない事(!)。

この2点だけで、これじゃパナ・松下は傾かない方がおかしいよな・・・、と異常な説得性を持って、理解出来ました。
特に、社長以下、経営幹部が「既に決まってる路線なんだから、私の責任ではない、と他人事(例:大坪社長の
プラズマ工場建設決済等)」と、およそ松下幸之助創業者の後継者と思えない噴飯ものの「ただのプロのサラリーマン」
態度には、もう言葉が無いです。

本書では、最大の戦犯は森下洋一氏と読み取れます。
森下エピソードの中でも一番呆れたのは、経営者として「この事業の将来性、会社としての10年20年先の先行投資」を
全く考えず、ただひたすら、「松下正治会長の気に入る様にする」、「谷井前社長の路線は良し悪しでなく、
(正治会長の気に入る様に)基本的に排除する」はまだしも、
「〇〇役員は嫌いだから、彼の担当事業には投資をしない」、「■■役員は正治会長のお気に入りだから投資は継続」などと、
小学生の子供レベルの判断をしているのには、激怒を通り越し、「諸行無常」感覚しか感じません。

「なぜあいつが役員に?」、「なぜあの男が社長なんだ?」、「元役員たちの証言で名門・松下電器の裏面史がいま明らかになる」、直截な帯の惹句にまずはグサッと心を掴まれました。同社が何故に無残な凋落の道を歩んだのか、ようやく疑問が氷解した感じです。企業人必読の一書かと。いやはや一気読みでした。

偉大な創業者であった松下幸之助、華族出身でプライドが高く権力亡者の松下正治、手堅いが正治切りの幸之助遺言を無視した山下俊彦、MCA買収など松下新時代の布石をしっかりと打ちながらも誤算と不運から道半ばで挫折させられた痛恨の谷井昭雄、ド営業上がりで経営を知らず松下崩壊の直接の責任を負うべき万死に値する森下洋一、世間的な辣腕経営者の見かけとは全く裏腹な「プロのサラリーマン」(183頁)に過ぎず傷を拡げただけの中村邦夫、リストラ以外になすすべの無かった大坪文雄、そして現時点で大組織の命運を託された津賀一宏と、現パナソニック全八代社長をめぐる経営暗闘が、岩瀬達哉氏の筆により簡潔かつ的確に描かれています。長く世に残る一冊になると思います。

「鯛は頭から腐るいいますよね。ドタマが悪いとね、下がしっかり頑張っても、全部腐ってしまう。やっぱり、みんな、松下電器は潰れへんと思うてたんですな。それが判断歪めてきたわけや」(112頁)。
「取締役会での議論らしい議論といえば、毎回、ひとり1万円といわれていた豪華弁当が振る舞われるんですが、そのデザートのメロンについて、今日のは小ぶりだとか、甘いとか論じ合うぐらいでした」(185頁)。
「プラズマの将来性を見誤ったそもそもの原因は、事実を見据えて戦略をたてる人材ではなく、事実を都合よく解釈するブレーンを自身の周りに配置したからだと、中村に近かった元役員は言う」(194頁)。
「プラズマ事業において、前任社長の中村が唱えた「オセロゲーム」理論を大坪が信奉していたというより、その理論をおそらくは否定できず、否定できない以上はその理論に従って経営しなければならないという一種の呪縛にとらわれていたのであろう。その結果として、まさにこの事業は「玉砕」してしまった」(219頁)。

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