ラデツキー行進曲(上) (岩波文庫) の感想

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タイトルラデツキー行進曲(上) (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者ヨーゼフ・ロート
販売元岩波書店
JANコード9784003246238
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学

購入者の感想

上下巻読了。
オーストリア・ハンガリー帝国。皇帝のもとで緩やかに連帯していたて多民族国家が、ナショナリズム(民族主義)と共産主義の台頭により、お互いに引き裂かれて、衰亡していく様子を、トロッタ家の3代を通じて、また、皇帝フランツ・ヨーゼフ(ハプスブルク家)との関わりのなかで描いていく。

物語の冒頭は、第二次イタリア独立戦争、ソルフェリーノの戦いである。スロベニア人の歩兵少尉トロッタが、前線視察に来た皇帝の命を救ったことで、貴族に叙せられることからはじまる。二代目のフォン・トロッタは軍隊には行かずに、郡長となる。三代目カール・ヨーゼフは、祖父に憧れ、軍隊に入る。親友を決闘で亡くしたり、未亡人との恋愛・不倫、賭け事などを経験し・・・・。
魅惑的な年上の夫人とのロマンスが、三代目トロッタに不幸をもたらす。

ラデッキー行進曲は、帝国内の諸民族の連帯の象徴である。規律や忠誠、軍隊で一番重要となる要素である。人々の純粋さ、貴族(騎兵)の誇り・名誉など。

初代トロッタが、ソルフェリーノ戦いの真実について陳情する姿と、その(誇張された)活躍が、後の世代まで恩恵を得ることができたのは、帝国の寛容さであったと思う。
賭博に明け暮れ、借金の返済に追われる将校たち。軍隊の規律が弱まることは、帝国の綻びでもある。戦争を経験しないこと、すれば必ず負ける軍隊は、必ず退廃するのだろうか。
一方で、民族主義の高まり、労働者の蜂起が起こり、帝国は既に崩壊していることを、誰もが気がついている。愚直にトロッタに仕えるフォン・トロッタ家のジャックや、カール・ヨーゼフの従卒オヌーフリは、ある意味、幸せなのかも知れない。

”ラデッキー行進曲”と、各国語が混じり合った”インターナショナル”の対峙。
お互いの寛容で成り立つ帝国にととって、民族主義の高まりは帝国の解体を招いていく。
サライェボ事件が起こり、オーストリア・ハンガリー帝国の後継者が暗殺される。その時の、各出自による反応がなんとも言えずに哀しい。帝国の衰退を悲しむ者、ざまぁみろとほくそ笑む者。そして第一次世界大戦が勃発し、カール・ヨーゼフも、軍務に復帰する。

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