ヒッチコック の感想

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参照データ

タイトルヒッチコック
発売日販売日未定
製作者エリック・ロメール
販売元インスクリプト
JANコード9784900997516
カテゴリジャンル別 » アート・建築・デザイン » 芸術一般 » 芸術理論・美学

購入者の感想

 ロメール+シャブロルはトリュフォーと異なり、ヒッチコックの『山羊座のもとに』を高く評価している。同じイングリッド・バーグマン主演の『汚名』に関しては、二つのヒッチコックの書物における最高度の評価は同じだ。
 久しぶりに『山羊座のもとに』を観なおし、それなりに面白いところはあったものの、やはりトリュフォーのほうの否定的な評価に軍配を上げたいと思った。だが『汚名』については、トリュフォーとヒッチコックの熱のこもった対話以上に、ロメール+シャブロルの文章に惹きこまれる。
 たとえば、ケーリー・グラントとバーグマンの「二つのラブシーン」の比較。《テラスでの最初の場面は、まさしく皮膚の水準にある。この場面は、互いにくっ付き、我々の目にも付いて離れない二人の人物の、一連の口腔の接触として現れる。この満たされることがなさそうなキスへの渇望は、愛が不在のときの肉の虚しさを表す。二つ目の場面では、単なる肉の接触はもはやなく、真の感情がある。アリシアを死から救出しに来たデヴリンは、マイアミの酒宴の後で登場した際と同じように影の中から現れ、カメラは極めて優しく官能的な動きで二人の恋人たちの周囲を回り、そのときスクリーンは、ヒッチコックがムルナウの許にその秘密を汲み尽くしに行った名状しがたい美によって輝く。》
 その長さにおいて有名なラブシーンに愛が不在だったかどうかは別として、少なくともラストに近い、男が死に瀕した女を救うシーンに至る時間の流れのなかで、いやおうなく愛が真になる過程は、ロメール+シャブロルがこの映画の物語を要約した部分でも表現されている。堅固なシナリオと細心な演出がかもしだすものに言葉の批評性を集中させたあらすじというべきであり、読むだけで感動してしまう。《古典的な「恋のいざこざ」を遥かに超えたもの》をあらためてそこに見出すしかない。

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