一般言語学 の感想
参照データ
タイトル | 一般言語学 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ロマーン ヤーコブソン |
販売元 | みすず書房 |
JANコード | 9784622019701 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 言語学 » 言語研究・記号学 |
購入者の感想
この本の中で、私が一番インパクトを受けたのは「言語の二つの面と失語症の二つのタイプ」という章です。ヤーコブソンはウェルニッケ野やブローカ野という脳内の問題ではなく、あくまで言語学の問題として失語症を説明しています。彼によると失語症を大きく分類すると、相似性の異常と隣接性の異常に分けることができるそうです。相似性の異常とは中世の初期以来の言語理論で、語はコンテクストから離れてしまっては意味を持たないと主張されてきたのですが、この種の患者はたとえ異なったコンテクストで発せられた語であっても単なる同音語にすぎないと受け取ってしまうのです。隣接性の異常では結構力が冒され幼児のような一文発言、あるいは一語文へと向かう傾向を持っています。ここには、隠喩と換喩、統辞関係と連合関係、その他諸々の言語の形態に気付かせてくれる要素があります。また、人間の行動様式や文学にも病的ではなく普通に両者は現れます。叙情詩では隠喩的構造が、叙事詩では換喩的構造が支配的なのは明らかです。また、ヤーコブソンはトルストイやチャップリンまで登場させて自身の言語論を展開しています。ただ、この本は易しく楽しい読み物ではなく、言語学の難解な教科書ですので、これを読む前に2,3冊言語学の本を読んでから取り組まれればいかがかと思います。