元素生活(文庫版) の感想

本書の著者は本来「イラストレーター」のようであるが（奥付略歴より）、本書にあたっては物理・化学・薬学など専門の研究者の「監修」を経ているらしく（6頁）、専門家は格別、私などの一般的読者には内容に特段の支障はないと思う。そもそもタイトルに見えるように、本書は『元素』の周期表などを元に物理・化学の専門的解説をする趣旨にはなくて、一応形式的には「１１８個すべての元素と、ミネラルから元素危機まで、今こそ必要な元素の基礎知識」を前提として、「自分でも楽しめるように考え……私たちの暮らしを“元素目線"で見てみるとどうなるかという切り口……ユーモラスでウィットに富んだイラスト……で見るイキイキ元素の世界」（以上このページの「商品の説明」より）を解説するものである。解説は元素周期表（及び国際的基準に従った分類・基本特性など）に従っているが、著者独特の擬人化イラストで現し、服装・髪形・体型などの変化によって、主たる使用用途・性質、発見年代、原子量・（常温の）状態などをシンボリックに表現する、（著者が“発明”した）「スーパー元素周期表」（第２章参照）が基準になっている。１つ注文（読後の感想）を言えば、発想はユニークで面白いのだが、元素キャラクターの髪型、顔、体型などに多く（「族」、用途、性質、原子量など）を詰め込み過ぎたため、一目では些か判りにくいという欠点がある。ただ本文のイラスト中に逐時キャプションがあるので凡例（第２章）に戻る必要はないが、キャプションを入れることで折角のキャラクター設定の意義が希薄になるという短所も否めない。構成・内容は前記「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、以下に個人的に興味深いトピックを紹介したい。