残りの人生で、今日がいちばん若い日 の感想

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参照データ

タイトル残りの人生で、今日がいちばん若い日
発売日販売日未定
製作者盛田隆二
販売元祥伝社
JANコード9784396634568
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者

購入者の感想

人生の折り返しを意識したときに、人はこれまでの変えられない過去を受け入れて、残りの人生を自分の意思で変えていこうと考える。しかし、過去に決別し、仕事や家族とうまく折り合いをつけ自分の意思を通すのは難しい。この作品は中年にさしかかろうとする男女が辛い過去を乗り越えて理解し合い、お互いを必要としていく過程をリアルな筆致で描いた秀作である。

出版社の編集者であるシングルファーザーの直太朗と書店の契約社員の百恵はともに39歳。新刊小説の販促がきっかけでふたりは知り合う。直太朗には、総合失調症を患った前妻とやむなく離婚した過去があった。百恵には不倫の苦い思い出があり、その後の婚活もうまくいかない。直太朗の9歳になる娘の菜摘がふたりを近づけるが、菜摘は母親から受けた虐待がもとでうつ病を発症する。困惑する直太朗をうつ病の母に育てられた百恵がサポートするようになり…。

主人公の直太朗と百恵がとても魅力的な人物として描かれている。爽やかで仕事熱心な編集者は家族を大事にする誠実な父親である。それでいて作家志望の女性と関係があって聖人君子というわけではない。一方の百恵は仕事ができて、思慮深く、感情を抑えがちであるが芯の強さをもっている。しかし、ふたりは弱さも併せ持っていることから私たちのまわりにいる隣人のようでもある。ともに辛い家庭環境を経験し、これからの人生に漠然とした不安を抱えている。そうした状況での不意の出会いとお互いが惹かれあう過程が実に巧みに設定されている。最初の出会いでふたりは意識し合うが、その先はなかなか進まない。娘の菜摘の発言や行動が効果的に使われていて物語にリアリティを与えている。父子家庭ならば父娘はこのように接するのだろうと想像することができた。そして、詳しくは書けないが先の読めない急展開が続き、読者を紙面に釘付けにする盛田氏の練達の手腕はさすがである。

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祥伝社から発売された盛田隆二の残りの人生で、今日がいちばん若い日(JAN:9784396634568)の感想と評価
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