風の歌を聴け (講談社文庫) の感想
参照データ
タイトル | 風の歌を聴け (講談社文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 村上 春樹 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062748704 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者 |
購入者の感想
『風の歌を聴け』は、
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
という印象的な書き出しで始まる村上春樹氏のデビュー作。1979年の作品である。
私がこの作品を読んだのは、今から24年前の1989年。
20代の頃、私は村上春樹氏の作品を読むのが好きだった。
理由など考えなかったが、村上春樹氏の作品を読むと孤独を癒される気持ちがしたのだ。
40を過ぎ、ふと思い立って再読し、その理由がわかったような気がした。
それは、村上春樹氏の作品から滲み出る、
「自分は、友人や恋人と本当に分かり合えることができるのだろうか」
という問題意識に、共感したからである。
例えば、物語の終わりで「僕」が「小指のない女の子」と過ごすシーン。
『「ずっと何年も前から、いろんなことがうまくいかなくなったの。」
「何年くらい前?」
「12、13…お父さんが病気になった年。それより昔のことは何ひとつ覚えてないわ。ずっと嫌なことばかり。頭の上をね、いつも悪い風が吹いてるのよ。」
「風向きも変わるさ。」
「本当にそう思う?」
「いつかね。」
彼女はしばらく黙った。砂漠のような沈黙の乾きの中に僕の言葉はあっという間もなく飲みこまれ、苦々しさだけが口に残った。
「何度もそう思おうとしたわ。でもね、いつも駄目だった。人も好きになろうとしたし、辛棒強くなろうともしてみたの。でもね……。」
僕たちはそれ以上は何もしゃべらずに抱き合った。彼女は僕の胸に頭を乗せ、唇を僕の乳首に軽くつけたまま眠ったように長い間動かなかった。
長い間、本当に長い間、彼女は黙っていた。僕は半分まどろみながら暗い天丼を眺めていた。』
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
という印象的な書き出しで始まる村上春樹氏のデビュー作。1979年の作品である。
私がこの作品を読んだのは、今から24年前の1989年。
20代の頃、私は村上春樹氏の作品を読むのが好きだった。
理由など考えなかったが、村上春樹氏の作品を読むと孤独を癒される気持ちがしたのだ。
40を過ぎ、ふと思い立って再読し、その理由がわかったような気がした。
それは、村上春樹氏の作品から滲み出る、
「自分は、友人や恋人と本当に分かり合えることができるのだろうか」
という問題意識に、共感したからである。
例えば、物語の終わりで「僕」が「小指のない女の子」と過ごすシーン。
『「ずっと何年も前から、いろんなことがうまくいかなくなったの。」
「何年くらい前?」
「12、13…お父さんが病気になった年。それより昔のことは何ひとつ覚えてないわ。ずっと嫌なことばかり。頭の上をね、いつも悪い風が吹いてるのよ。」
「風向きも変わるさ。」
「本当にそう思う?」
「いつかね。」
彼女はしばらく黙った。砂漠のような沈黙の乾きの中に僕の言葉はあっという間もなく飲みこまれ、苦々しさだけが口に残った。
「何度もそう思おうとしたわ。でもね、いつも駄目だった。人も好きになろうとしたし、辛棒強くなろうともしてみたの。でもね……。」
僕たちはそれ以上は何もしゃべらずに抱き合った。彼女は僕の胸に頭を乗せ、唇を僕の乳首に軽くつけたまま眠ったように長い間動かなかった。
長い間、本当に長い間、彼女は黙っていた。僕は半分まどろみながら暗い天丼を眺めていた。』
この本を読んだのは大学一年生の時。私は自ら孤独に入り込むような人間なので、この本、この作者が合うのだと思います。
だからこそ危険なんです。私にとってこの人は。自ら行動しなくてもなんらかの事柄が良いように降りかかってきて、主人公は退屈していない。女は常にいるし、仕事もある。
気が向いたらセックスをして、コーヒーを飲んで、サンドウィッチをつくり、パスタを・・・。
実際問題として現実に目を向ければ、物事は自分から動かなければ何も進展しない。
私のようなものがこんな生活(人間)に憧れてしまえば、どうなるか。
朝食にコーヒーを淹れ、ハムとチーズのサンドウィッチをつくり、寝る前にワインを片手にドストエフスキーやらフィッツジラルドを読むお洒落な?ひきこもりになってしまう。
私はこの作者の本を読むびに現実と理想のギャップをひしひしと感じてしまうのです。0
だからこそ危険なんです。私にとってこの人は。自ら行動しなくてもなんらかの事柄が良いように降りかかってきて、主人公は退屈していない。女は常にいるし、仕事もある。
気が向いたらセックスをして、コーヒーを飲んで、サンドウィッチをつくり、パスタを・・・。
実際問題として現実に目を向ければ、物事は自分から動かなければ何も進展しない。
私のようなものがこんな生活(人間)に憧れてしまえば、どうなるか。
朝食にコーヒーを淹れ、ハムとチーズのサンドウィッチをつくり、寝る前にワインを片手にドストエフスキーやらフィッツジラルドを読むお洒落な?ひきこもりになってしまう。
私はこの作者の本を読むびに現実と理想のギャップをひしひしと感じてしまうのです。0