弁証法はどういう科学か (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル弁証法はどういう科学か (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者三浦 つとむ
販売元講談社
JANコード9784061155596
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 論理学・現象学

購入者の感想

初めて手に取ったのは、40年近い昔のことであった。ヘーゲルの弁証法を唯物論の立場から再構成した書物の中で、これだけ核心をおさえて、しかも専門家以外の人にも向けて書かれたものは未だないのではないか。最近、ビジネス書の中に「ヘーゲル弁証法」とうたいながらエンゲルスがいささか「科学的」に抽出した弁証法の法則を解説したものが見られるが、同列には論じられない名著と思う。マルクス主義を支持しない立場でも、弁証法というゆたかな論点を含む思考法に興味のある人には有用な書物であろう。

 高校時代、現国の教師が薦めていたので買ってはみたものの、読んでみると何がなにやらさっぱりで、以来最近に至るまで一度も開くことがなかったが、読んでみればとても素晴らしい1冊だった。

 他のレビュアーさんが言っている通り、毛沢東・レーニン・スターリンといった社会主義国の首脳の名前がたびたび引用され、内容自体もエンゲルスによる科学的弁証法を下敷きにしているようだが、その独特な社会発展の法則への確信を割り引いておけば、今目の前にある出来事について考えるための強力な分析用具を得ることが出来る。

 構成は、1章に序論、2章にカントを経たヘーゲルの弁証法からフォイエルバッハを経てマルクスへ、そしてエンゲルスへと至って科学的弁証法が形作られるまでの歴史を概観する。前から思っていたが、マルクスは根っからの研究者、エンゲルスが理論家であり宣伝者でもありマルクス主義の創始者、という位置付けは共通前提のようだ。
 第3章からが科学的弁証法の中身の解説だが、その「『対立物の相互浸透』とはどういうことか」のセクションが130ページ弱に渉り、本書の核となっている。「全てはつながっていると同時につながっていない」、「全ては媒介され、かつ直接性を含んでいる」「他者に関わっていけば世界が二重化されると共に自分も二重化されていく」「人間と自然(環境)、人間と人間は相互浸透していく」など、手探りでいろいろ考えたり感じていた断片的な印象や観照がここで一貫した推論として展開されていることに驚いた。
 第4章は「量質転換」、量の変化が質的変化を引き起こし、質の変化が量的変化の引き金になるということ、第5章は「否定の否定」、真のポジティヴさに至る為にネガティヴなことを考え抜き、表現した上でそのネガティヴさを乗り越えて鮮明なポジティヴさを描き出す戦略、第6章は矛盾、世界は過程の複合体であり、だから矛盾の複合体でもあるということが論じられる。

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