残夢の骸 満州国演義9 (満州国演義 9) の感想

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タイトル残夢の骸 満州国演義9 (満州国演義 9)
発売日販売日未定
製作者船戸 与一
販売元新潮社
JANコード9784104623105
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » は行の著者

購入者の感想

渾身の力作、終に最終回に
壇一雄の「夕日と拳銃」の乗りでスタートした「満州国演義」、第一巻が発行されたのは
2007年4月副題「風の払暁」であった。2005年から週間新潮に連載されたものに加筆訂正
されたハードカバーで、三国志演義にならった壮大な歴史小説の構想が見えてきたのかも
しれない。主役である麻布の名家に生まれた敷島四兄弟が満州国設立以前から満州を舞台
に繰り広げる様々な異質の活動を描いたもので、ある意味戦前の昭和史が語られていると
言ってもよいだろう。第三巻までは週間誌連載の単行本化であったが、それ以降は書き下
ろしとなり作者はこれ一本に集中したせいか時代考証がより綿密になってきたようだ。以
下年一冊くらいのペースで歴史に弄ばれる大日本帝国の盛衰が敷島四兄弟の活動を通じて
語られて行く。そして第九巻、副題「残夢の骸」を以って全巻終了となる。ナチスドイツ
降伏の3ヶ月後に開始されたソ連軍の対日参戦、希望に満ちて建国された満州国は無残に
蹂躙される。最終巻では無情な敗戦の実態が容赦なく描き出される力作だ。
 各巻400ページを超えるこの作品を書き終えて、作者は語る。小説は歴史の奴隷ではな
いが、歴史もまた小説の玩具ではない。設定された客観的事実を小説家の想像力が緊張を
もって対峙されるべきであると。では歴史とはなんだろう。
「歴史とは暗黙の諒解のうえにできあがった嘘の集積である。」ナポレオン・ボナパルト
 この最終巻が発行された直後、作者は長い癌との闘病生活に終止符を打った。
謹んでご冥福をお祈りします。

  船戸与一渾身のライフワークとも言える大作「満州国演義」全9巻7500枚(新潮社)が、10年の時をかけて完結した。『風の払暁』『事変の夜』『群狼の舞』『炎の回廊』『灰塵の暦』『大地の牙』『雷の波濤』『南冥の雫』『残夢の骸』、各題名だけでもオイラ圧倒されてしまう。昭和3年の張作霖爆殺事件から昭和6年満州事変、昭和7年第1次上海事変、満州国建国、昭和11年2・26事件、昭和12年盧溝橋事件、第2次上海事変(日中全面戦争へ)、昭和14年ノモンハン事変、昭和16年太平洋戦争突入、昭和20年ソ連軍満州侵攻、日本無条件降伏、昭和21年天皇人間宣言、満州通化事件に至るまでの激動の二十余年を、満州を主な舞台として、架空の主人公敷島家四兄弟、外務官僚の長男、元馬賊で自由人の次男、憲兵将校の三男、インテリであった四男、彼らの視点を通して描ききったのだ。また四兄弟を狂言回しのごとく操る特務機関員の存在も忘れてはならない。この作品の冒頭に描かれた慶応4年8月戊辰戦争会津鶴ヶ城下のエピソードが、完結巻で解き明かされようとは。
 この作品は歴史の流れを追った通史小説としても、先の戦争の歴史を再確認することが出来る。そこには著者があとがきで触れているように戦争の形態の変化が如実に現れているのだ。軍隊間の近代戦は総力戦となり、前線も銃後も差別なき殲滅戦の時代となった。そこにはもはや浪漫主義のつけ入る隙はないと。しかしそればかりではない。軍部や政府の意思だけではなく、国民の気分、マスコミの煽動、全てが戦争に突き進む過程をも、こと細かに描き出している。日本の今の状況と比較してみると、その細かな過程一つ一つが現実に思い当たってしまうのだ。長州出身の著者は、完結巻で日本の海外膨張主義、侵略主義の原点として長州の吉田松陰を引用しているが、帝国主義者の全てが、最初から厳然とした帝国主義者として存在するわけではない。四兄弟もまたそれまでの自分の思想信条にかかわらず、状況の中で知らず知らずのうちに帝国主義者となり、大日本帝国および日本軍のために働いていくことになったのだ。

著者が10年を費やして書き上げた「満州国演義」の完結編です。
私は、昭和16年2月に結婚した両親が仕事の関係で新婚生活を
満州,新京で送っておりその時に宿り、16年の12月に
日本に母のお腹の中で、ともども帰国し、翌年3月、文京区本郷にて生を受けました。
 かと言って両親からは満州時代の話を聞いたわけではありません。
したがって「満州国演義」というタイトルには強烈に惹きつけられ
1巻から6巻までは恐らく1か月掛からずに読んでしまいました。
 そして、待ちに待った9巻目、本日読み終わりました。
まさしく「残夢の骸」のごとき読後感でした。 
歴代天皇制の神格化、そして皇軍と言われた帝国陸海軍将官の
日露戦争勝利の不滅神話化、当時の国民感情、ジャーナリズムの
歪曲化、空恐ろしい時代だったということを改めて教えて
いただいたと思います。今、高校1年の孫に、いつかは絶対に
読んでもらいたいと念じています。
さて、瀬島龍三をモデルとした有吉佐和子著「不毛地帯」では彼を
非常に英雄的、好意的に書かれていましたが、本書では彼の軍人としての
活動をかなり懐疑的に表現されています。
どちらの瀬島龍三が実態に近いのかは、本人のみぞ知る、ことでしょう。

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