新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)
発売日販売日未定
製作者都筑 卓司
販売元講談社
JANコード9784062573849
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 物理学 » 一般

購入者の感想

100℃の水1Lと0℃の水1Lを混合すると50℃の水2Lができる。しかし、これを再び100℃と0℃の水に分離することはできない。容器の中の水分子はランダムに動き回っている。分離している状態とは、100℃の水分子が全て容器の左側に片寄って位置しているなら、0℃の水分子は全て右側に片寄って位置しているということだ。これは確率的に極めて起こりにくく、起こったとしても無いに等しい一瞬の時間でしかない。混合している状態の方が起こりうる確率が圧倒的に大きい。

この分離から混合への一方向性(不可逆性)こそが、エントロピーは増大するという熱力学の第2法則である。100℃と0℃の温度差は理論上熱機関を動かすことができる。50℃という一様な温度ではそれができない。同じ量のエネルギーでも良・不良があることが分かる。良質な力学的エネルギーは減っていき、役に立たないエントロピー的エネルギー(熱エネルギー)は増えていく。

本書は1970年に発行された旧版の新装版である。内容は古びておらず、予備知識なしで統計力学を楽しむことのできる稀有な一冊だ。マックスウェルの悪魔という架空の存在を登場させたり、人間や社会にエントロピーの概念を用いて未来を予言してみたり(その予言は見事に当たった!)、教科書のような堅苦しさは感じさせない。トピックも豊富で、永久機関やマイナスの絶対温度、あるいは情報理論におけるビットとエントロピーなど興味深い話が満載だ。他のレビュアーの方々の評価が軒並み高いので読んでみましたが、皆さんの評価どおりです。私も星五つ。

「分子や原子などの粒子の集団としての振る舞いを統計的に記述する物理」に統計力学という分野がある。統計力学は、現代物理の根幹的な役割を果たしているにも関らず、量子論や相対論などと比べると陰が薄い。したがって、統計力学について一般向けに書かれた本は少ない。

本書はそんな若干陰の薄い統計力学について、一般向けに書かれた数少ない本である。著者は、一般向けに面白く物理を解説する本を数多く書かれている都築卓司先生である。都築先生の専門は統計力学ということで、本書は結構深いところまで触れる。しかし、大変分かりやすく、しかも面白く書かれているので心配はいらない。

内容はマックスウェルの悪魔という「エネルギー保存の法則、エントロピー増大の法則」を打ち破る能力を持った悪魔の話から始まり、永久機関の話、エルゴード仮説の話…続く。そして、最後の章、カタストロフィー(悲劇的な結末)で、地球のエントロピーがこのまま増大したらどうなるかということについて書かれている。この最後の章はかなり考えさせられます。

本書は間違いなく「名著の中の名著」といって良いと思います。統計力学という学問を知るだけでなく、現代社会が抱える問題も見えてくるような本です。こんな素晴らしい本を後世に残してくれた著者に心から感謝したいと思います。0

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)

アマゾンで購入する
講談社から発売された都筑 卓司の新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)(JAN:9784062573849)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.