英語の冒険 (講談社学術文庫) の感想

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参照データ

タイトル英語の冒険 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者メルヴィン・ブラッグ
販売元講談社
JANコード9784061598690
カテゴリ人文・思想 » 言語学 » 英語・英語学 » 英語学

購入者の感想

議会の発祥が国王と貴族との権力闘争から生まれたということを「物語イギリスの歴史」を読んで納得した。そのあたりからイギリス史に興味を持つようになった。先日の、「女王陛下のお気に入り」という映画なども1700年代のアン女王の対仏戦争を描いていた。「ふたりの女王」はまだ観ていないがアン女王より120-130年前のイギリス、フランスが舞台である。英語に取り込まれた日本語として、津波、腹切り、神風など有名な単語も記載されている。発祥のイギリス人が肝を冷やすぐらい、底がなくなるような不安感、不安定感の中、英語は世界中に広まり、もはや他言語の出る幕はないようである。しかし、100年後は分化したご当地英語が半ば独立して存在する気もする。

 英語の歴史を綴った書物はもちろん過去にいくつもあります。私も「英語発達小史」(H・ブラッドリ著/岩波文庫)や「英語のなかの歴史」(O・バーフィールド著/中公文庫)などを20年近く前に手にしたことがあり、どちらも大いに楽しんだ憶えがあります。それでも本書は痛快無比の冒険譚とよぶに相応しい書です。

 1500年に渡る英語の流転と進化の物語を、イギリスの純文学作家が筆を執って血沸き肉踊るかのような読み物に仕立て上げています。英語という言語が時空の荒波をかきわけ、1500年に渡る熾烈な生存競争に逞しく打ち克っていく姿が実に生き生きと描かれています。「英語史」という学術的知識はもちろんのこと、書を読むことの「すこぶるつきの」面白さを与えてくれる一冊です。
 そして英語の歴史を見つめていくと浮かび上がってくるのは私たち人間の意識の影に隠れた心です。ラテン語やフランス語と闘う御国言葉、新大陸の開拓者生活を貪欲に飲み込む言葉、インドなどの植民地での支配者の言語、サイバースペース上で70%のシェアを誇るツール。気の遠くなるような時間と空間を通して英語は揉みに揉まれながら、「言語かくあるべし」という話者たちの心を強く反映しながら今日に至っている様子が鮮明に描かれています。

 翻訳は350頁を超えますが、翻訳者・三川基好氏の日本語はいたずらに華美へと走ることなく、おそらく原書の味わいを損ねることのない落ち着いた言葉を慎重に選びつつ平易な文章に仕上げています。長時間読み続けても倦み疲れることが決してありませんでした。私は外回りの営業活動中、休憩時間に喫茶店で本書を紐解きながら、その面白さにからめ取られてしまって仕事に戻れず困ったほどです。
 こうした良書が一人でも多くの読者の手元に届くことを願ってやみません。

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