ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4) の感想
参照データ
タイトル | ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | シュテファン・ツワイク |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003243749 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学 |
購入者の感想
シュテファン・ツワイクの本のなかで、フランス革命の中に、その題材を求めた本が幾つかある。「ジョゼフ・フーシェ」、この副題ー「ある政治的人間の肖像」は、フランス革命史の側面を語る、白眉の一つであろう。ミシュレやマチエのフランス革命史は、実に重厚な正統的的記述であるが、しかしツワイクの、この本は、特にある人物、然もその端緒から反動期にかけて、縦横無尽に泳ぎ回り、且つ生き残った特異な性格人物の伝記である。「サン・クルーの風見」と陰口をたたかれた、強靭な変節漢の生き方は、革命とは何か?人間とは何か?、について根本から考えさせられる。恐らく、フーシェにしても、根っからの悪人と言うわけではなく、オラトリオ学院の僧院に質素に暮らした熱心な教師であり、ごく真面目な人物でもあったろう。それが歴史的な激動に翻弄されて、必然的な悪にも、偶然的な悪にも、手を貸した事は再々であった。多くの歴史の転換期には、この様な特異な性格の人物が出現するのである。
ツワイクは、フーシェについて、革命期を通して、最も自制心に富み、心理戦において、誰よりも強く、ナポレオンをも打ち負かした人物と言及している。この本の制作動機も、極めて興味深い。ただ、この著書の混乱期にも似た時代に出くわした、ツワイク晩年の人生が、亡命と放浪と言う苦悩に満ちていたことは悲劇であった。オーストリアーハンガリー帝国の首都ウィーンで、裕福なユダヤ系繊維業者の家庭に育ち、多感な青春時代を過ごし、ウィーン大學で哲学を専攻し、やがて哲学博士になったツワイクは、第一次世界大戦を経て、ワイマール共和国の中で多くの著作を成し、その時代の怒りと憎しみから出現した、国家社会主義ドイツ労働者党を逃れて、南米で自ら死を選んだ人生は、フーシェの様に過酷な狂気の時代を泳ぎ切れなかった弱さを、伝記作家の悲しみを感じる。ツワイクの自伝である「昨日の世界」と合わせて読んでみることをお勧めします。
ツワイクは、フーシェについて、革命期を通して、最も自制心に富み、心理戦において、誰よりも強く、ナポレオンをも打ち負かした人物と言及している。この本の制作動機も、極めて興味深い。ただ、この著書の混乱期にも似た時代に出くわした、ツワイク晩年の人生が、亡命と放浪と言う苦悩に満ちていたことは悲劇であった。オーストリアーハンガリー帝国の首都ウィーンで、裕福なユダヤ系繊維業者の家庭に育ち、多感な青春時代を過ごし、ウィーン大學で哲学を専攻し、やがて哲学博士になったツワイクは、第一次世界大戦を経て、ワイマール共和国の中で多くの著作を成し、その時代の怒りと憎しみから出現した、国家社会主義ドイツ労働者党を逃れて、南米で自ら死を選んだ人生は、フーシェの様に過酷な狂気の時代を泳ぎ切れなかった弱さを、伝記作家の悲しみを感じる。ツワイクの自伝である「昨日の世界」と合わせて読んでみることをお勧めします。