昭和陸軍全史 2 日中戦争 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル昭和陸軍全史 2 日中戦争 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者川田 稔
販売元講談社
JANコード9784062882897
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

待望の第2巻では、満州事変を経て宇垣派が権力を失った陸軍での派閥争い、そして、日中戦争までが考察の対象。
以下に永田・石原・武藤の各論を記すが、3人とも佐官クラスの集団が将官を擁し、内閣を屈服させることを是とする点では共通しており、このスタイルが1945年の敗戦まで延々と続くことになり、これがナチスドイツやイタリアと比べても特異であり、本書の範疇外ではあるが、極東軍事裁判の奇形につながるとも思えた。完結篇の第3巻で注目されるが、東条が権力集団の中核ではなく、擁立されるいわば神輿的に本書で扱われる点も注目するところだろう。

皇道派と統制派の覇権争いについて、永田の中長期の戦争観に対して、荒木・真崎達が視野の狭い戦略しか描いていなかったことを蹴り出しに、永田が皇道派粛清と青年将校弾圧の二面作戦を展開するくだりは圧巻。永田は、平和主義者ではないが、リアリストであったし、何より政治を分かっていた(だからこそ、最も政治的な将軍の宇垣を敵視したのだろう)。日中戦争の泥沼にはまる勢いで米英との対立をいたずらに深めた自分の後輩−東条達を泉下で如何に思ったのだろうと思わずにはいられない。

そして、独特の世界観ながら、卓越した戦略を次々と打ち出した石原の唯我独尊ぶりは、永田とは異なる追放劇をもって幕を閉じる。
本書においては、永田の直系を自負する武藤章が、対ソ防衛を最優先する石原が永田の軍略を破棄する形で融和的ともいえる対支策を打ち出すことに反発し、統制派を糾合し石原を圧迫していくという見方が示され、今回の白眉の見識といえよう。(梅津に代表される政治志向の薄い実務派が、長いものには巻かれろとばかりの対応をしていたというのも目立たない部分の指摘として注目)

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