高熱隧道 (新潮文庫) の感想

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タイトル高熱隧道 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者吉村 昭
販売元新潮社
JANコード9784101117034
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

平成の日本で、この小説と非常に近い職場環境を経験しました。
現在は閉山しましたが、国内の鉱山で、岩盤温度は最高180度。
爆薬や雷管の自然発火を防ぐため、火薬メーカーに特注の耐熱爆薬と
耐熱雷管を製造してもらっていました。
岩盤温度が低い現場もありましたが、高温現場では小説と同様に常時
放水が必要で、水が途中で熱くならないように、トンネル先端の
放水口まで断熱材を巻いたパイプで送水していました。
熱気はファンと通気パイプで排気。足元の泥水はポンプで排水。
放水と排水・排気の総力を挙げて作業現場を冷やしても、湿度100%、
気温50度以上の現場が数箇所ありました。この環境では、汗は乾きません。
逆に汗が外気に熱せられて熱湯になります。体を冷やす方法は氷水を
飲むか、放水シャワーに打たれることだけです。最もきつい現場では、
熱の波が顔に当たってくる感覚が有り、防塵マスク越しに吸い込む
空気で喉が焼けそうでした。放水シャワーの中から出て作業できる
時間はどう頑張っても1回で1分未満でした。
現場までの通路は放水しておらず、一定間隔で蛇口があるだけなので、
一般的な耐久力では現場まで辿りつくこともできません。ここでの
作業を割り当てられるのは、作業員の中でもずば抜けた耐久力を持つ
猛者数名でした。1年に1人未満でしたが、事故死もありました。
さすがに約60年の違いがあり、作業者の安全は向上していましたが、
一部の強烈な作業環境は戦場を思わせるものがありました。そのためか
戦友のような仲間意識が生まれており、自分にとっては短い年数
ながらも忘れることができない特別な経験でした。
この職場を離れてからこの小説を読み、高温現場での作業の描写が
あまりにも自分の体験とそっくりだったので本当に驚きました。

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