知られざるスターリン の感想

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二段組み５００ページを超える力作。それも、普通の読者にはあまり馴染みがなく、しかも悪いイメージが殆どの独裁者スターリンの研究書である。しかしながら、これは読む価値があり、また読み応えのある好著。内容は、文献資料を博捜した本格的な研究書であるので読みこなすのは大変であり、相当専門的な議論が続く部分もあることはあらかじめ覚悟しておかなくてはならない。それでもなお、本書を読むことで「歴史」と、そして「人間」というものについて深く考えさせられる、その深さが貴重である。本書を通じても、スターリンの行ったことは決して擁護されることがない、それどころか、この人物によってどれほど多くの人々が踏みにじられ、不当に犠牲を強いられたかということは、改めて戦慄を感じさせられるほどである。しかしながら、筆者も言うように、そうした姿の向こうに「途方もない意志の力を持ち」「知性に溢れた」並はずれて優秀な、偉大な才能に恵まれた巨人が立っている。これほどの人間に対しては、当時誰も対抗することができなかったのは当然であり、そればかりか、今日もなを、その存在は様々な位相において解くことのできない疑問符をわれわれに突き付け続けているのである。ともかく、圧倒的な一冊。