試したくなる。おいしいワインに出会う本 の感想

類書では、ワインのプロフィール（産地、品種、ヴィンテージ、栽培醸造方法、地質など）、味わい、マリアージュ（食事との組合せ）が別々に書かれていて、これらの関係が分からないことが多いと感じています。本書では、「産地の特徴はこうで、従ってこういう味わいとなり、このような生活シーンでこのようなマリアージュで使える！」と論理的に説明されています。ワイン選びにプロフィール情報が「使える」ようになるノウハウが満載です。

蛇足ですが、著者が執筆主幹を務める雑誌「ワインホワット!?」（amazonで入手可能）と併せ読めば、味わいの特徴をキーに具体的なワイン銘柄の最新情報や購買サイトまでがひと連なりとなり、より便利です（銘柄と酒店は本書でも紹介されていますが）。

更にマリアージュに関しては、類書では、産地を合わせる、重さを合わせる等々の原則を紹介して、（それでは的中率が低いためか）「結局は好み」と逃げ文句を書き添えていたりします。これでは自分の味覚を磨いたり、好みの押しつけではなく理論的に自信を持って友人や家族にワインを勧めることは出来ません。本書で著者は、「マリアージュを考える新たな軸＝味わいの特徴の新分類」をいくつか提案しています。これが実感的に実によく当たります。

過去の出版物をライターが纏め直してこと足れりとする類書の出版が多い中、本書は著者の探求に裏打ちされた分析や新提案が随所にあり、新たに読むに値する良書だと思います。しかもやさしい言葉で書かれています。

家族との食事で今晩はどのワインを選ぼうかとお悩みの方に、ワインスクールの副読本に、あるいはワインエキスパート取得者への新たな刺激として、本書をお勧めします。あと、レストランでワインリストを見るのが楽しくなりますよ。