村上春樹 雑文集 の感想

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参照データ

タイトル村上春樹 雑文集
発売日販売日未定
製作者村上 春樹
販売元新潮社
JANコード9784103534273
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » ま行の著者

購入者の感想

 前書きによると「作家としてデビューしてから三十年余り、あれこれの目的、あちこちの場所のために書いてきて、これまで単行本としては発表されなかった文章」を集めた一冊。
 誰かの本に付した序文や解説、受賞式の挨拶文、『アンダーグラウンド』をめぐる著者の見解、翻訳に関する文章などなどが収められています。

 エルサレム賞の受賞式でのスピーチ「壁と卵」は実に心打つ文章です。パレスチナ人に対して武力を行使するような国から賞を受けるにあたって村上春樹は果たしてそこで何を語るのか、と大変大きな注目を浴びた時のものです。
 そのスピーチで村上は、本来は我々人間を守るはずの「システム」が、私たちを殺し、殺させるものへと容易に変貌することを指摘し、警鐘を鳴らしています。
 おそらく村上春樹と同じような立場に立たされた作家たちの多くが単に賞を拒絶して済ますかもしれなかったところを、言うべきことを言う文章を携えて現地に赴いたというその勇気ある凛とした態度に強い共感を覚えました。

 そしてこの書に収められた数々の「雑文」が浮かび上がらせるのは、村上春樹という作家が自分を囲む事柄や人々、そして事象の数々との間に持つ相関関係や距離感です。それは「自分について原稿用紙4枚以内で説明しなさいという就職試験の設問にどう答えたらよいのか」という読者から寄せられた質問に、村上自身が「例えば牡蠣フライについて書いてみれば、自分と牡蠣フライとの相関関係や距離感が自動的に表現されて、それがすなわちつきつめれば自分自身について書くということになる」と答えている事実に即しているともいえます。(「自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)」)
 そしてそこに見えてくる村上春樹という作家の、社会に向ける眼差しの優しさと厳しさに、心が温もっていくのが分かります。

 「雑文」という言葉が似合わない、味わい深い文章が詰まった書です。0

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