意味がなければスイングはない (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル意味がなければスイングはない (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者村上 春樹
販売元文藝春秋
JANコード9784167502096
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

村上春樹さんの音楽に関する本は、その造詣の深さと、人間洞察の味わいに圧倒されます。
『意味がなければスイングはない』の中に、スタンゲッツ(1927-1991)のページがあります。
ジャズメンの少なくない面子が、かつて薬物漬けによって演奏家生命の寿命を縮めてきました。
10代から天才の名を欲しいままにしてきたスタンゲッツもヘロインと酒に依存していました。

スタン・ゲッツは、リラックスした精神状態が演奏にとって重要だと言っています。
村上さんも注目した“アルファ状態”=“集中力が希薄な状態”が、良い演奏には必要なのだと。

スタンゲッツが他の薬物常習者の演奏家と一線を画していたのは、何か?
薬物漬けの中で、しかし、一度テナーサックスをもてば、世界を変えることができる。
あの信じられないような息遣いによる美音。
雲の上にいるような一種の浮遊感を生み出すあの音楽を奏でるのです。

村上さんは、「その代償も大きかった」と指摘します。
つまり“アルファ状態”を生み出すために、ヘロインと酒への依存を必要としたからです。

1987年のコペンハーゲン・モンマルトルクラブでのライブ盤。
ぼくは、このCDがとても好きでよく聴きます。
もともとラジオ録音で、発売予定はなかったようです。
でも、後になって、協演したケニー・バロンと聴きなおすと、その出来栄えの良さに驚き発売に至ったのだそうです。
マイベストワンは、2曲目の『言い出しかねて』です。
冒頭からの、あの囁きため息をつくような吹き方の妙をどう言ったらいいでしょうか。
スタン・ゲッツの放つ息が、サックスのマウスピースにリガーチャーで固定されたリードを震わせると、葦の樹の精霊が、その魔法の息で蘇り、音楽の国に聴き手を誘うのかとさえ思ってしまいます。
一瞬にして彼の世界へ連れて行ってしまう魔性。
協演のケニー・バロンのピアノ、ルーファス・リードのベース、ヴィクター・ルイスのドラムスのリラックスした寄り添い方が、ゲッツの醸し出す音楽を彩るようで、沁みます。

村上春樹は本業の小説の中にも音楽を効果的によく散りばめている。読んで影響された人も多いと思う(自分もその一人で、ジャズをちゃんと聞き始めたのは村上さんによる)。そんな村上春樹がクラシックからJ-POPまで音楽への愛情をこめて書き上げた作品。
もちろんただ曲が良いとか演奏がうまいとかのディスクガイドに終わらず、音楽を奏でる「人」を村上さんにしか書けない文章で描き、音楽への誠実さが伝わってきます。
音楽と読書が(平凡だけど)趣味で良かった、幸せだと感じれる作品だと思います。0

軽くて重く、重くて軽い内容の本書。

村上春樹の本気がギンギンみなぎっている。

小説以外の著作では、確実に「最高傑作」だと断言する。

本書は単なる音楽評論ではない。

村上は以前「本当の自分を伝えるためには自分の好きなモノを語ればよい」と提案したことがある。

彼はその著作で、大好物であるカキフライの素晴らしさを語っていた。

ここではカキフライが、11人の音楽家である。

もうボリューム満点。

村上春樹によって、村上春樹自身がたっぷりと描かれているのだから。

音楽に興味がないからといって本書を敬遠するのは筋違い。

『村上春樹、自分を語る』というタイトルがふさわしい。

当然ながら村上ファンは必読だ。

彼の小説を読んだことがない読者にとっては、村上春樹という作家を知ることが出来る絶好の著作である。0

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