さとやま――生物多様性と生態系模様 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ) の感想
参照データ
タイトル | さとやま――生物多様性と生態系模様 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 鷲谷 いづみ |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784005006861 |
カテゴリ | ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 環境問題 |
購入者の感想
我が国の保全生態学の第一人者と目される著者が、中高校生の読者を想定して、我が国の自然環境や生物多様性の特性と、そこに迫っている危機の現状、保全に向けた取り組みなどを解説した傑作書。これ以上ない読みやすさと分かり易さを担保した上で、今日の我が国の生物多様性保全の実践に必要な概念の全てが、些かの過不足もなく、しっかりと解説されている。「お見事!」と言うしかない。
本書の素晴らしさは、「はじめに」を読むだけでも分かる。いくつかのキーワードやセンテンスを挙げてみよう。
…「複合的な生態系」「伝統的な土地利用」「採集・狩猟するような行為まで広く含む」「自然を根こそぎ破壊することなく、末永くその恵みを受けられるような工夫と節度」「自然の営みと人間活動との合作ともいえるダイナミックなシステム」「パッチワーク」「半自然」「地球に生きる六〇億を越える人々が、心身ともに豊かで安全な暮らしを末永く営む近未来」…。
たった3ページほどの短い文章の中に、我が国の自然環境と生物多様性の特徴を理解し、その保全を考えるために必要なエッセンスが凝縮されている。
しかしもちろん本書は、「はじめに」だけを読めば十分というものではない。
私は以前、同じ著者の岩波ブックレット『〈生物多様性〉入門』に対しては、その網羅性を評価しつつ、
>むしろ何か一つを取り上げて、その奥深さを見せる部分があったほうが、
>初学者にとっては魅力的だったような気がする。
と評価した。概説書としての優秀性は認めつつも、特に初学者には「読み物」としての魅力に欠けるのではないかと感じられ、生物多様性保全の世界へと、十分に惹きつけることが難しいのではないかと考えたのである。
本書の素晴らしさは、「はじめに」を読むだけでも分かる。いくつかのキーワードやセンテンスを挙げてみよう。
…「複合的な生態系」「伝統的な土地利用」「採集・狩猟するような行為まで広く含む」「自然を根こそぎ破壊することなく、末永くその恵みを受けられるような工夫と節度」「自然の営みと人間活動との合作ともいえるダイナミックなシステム」「パッチワーク」「半自然」「地球に生きる六〇億を越える人々が、心身ともに豊かで安全な暮らしを末永く営む近未来」…。
たった3ページほどの短い文章の中に、我が国の自然環境と生物多様性の特徴を理解し、その保全を考えるために必要なエッセンスが凝縮されている。
しかしもちろん本書は、「はじめに」だけを読めば十分というものではない。
私は以前、同じ著者の岩波ブックレット『〈生物多様性〉入門』に対しては、その網羅性を評価しつつ、
>むしろ何か一つを取り上げて、その奥深さを見せる部分があったほうが、
>初学者にとっては魅力的だったような気がする。
と評価した。概説書としての優秀性は認めつつも、特に初学者には「読み物」としての魅力に欠けるのではないかと感じられ、生物多様性保全の世界へと、十分に惹きつけることが難しいのではないかと考えたのである。