ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯 (叢書ビブリオムジカ) の感想
参照データ
タイトル | ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯 (叢書ビブリオムジカ) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 松原千振 |
販売元 | アルテスパブリッシング |
JANコード | 9784903951676 |
カテゴリ | エンターテイメント » 音楽 » クラシック » 19世紀以後 |
購入者の感想
人気の割りには日本語オリジナルの伝記が少ないシベリウス。それだけに期待してAmazonnから購入したが、残念ながら以下の2点で減点とさせていただいた。第一点は事実誤認が見られること。P53に「ドビュッシーやラヴェルが数回にわたる落選を経たのち、ようやくローマ大賞を受賞できた話も想起される。」とあるが、この記述通りうけとれば、ドビュッシーもラヴェルも最終的には受賞の運びとあいなったようになるのでは。なるほどドビュッシーはローマ大賞を受賞するが、ラヴェルは残念ながら5回挑戦しながら結局落選の憂き目にあい、これが「ラヴェル事件」に発展したことは周知の事実ではないか。事実誤認はこれだけであることを祈りますが、これほどの常識的な事実さえ間違う筆者の音楽知識からすれば、この著作の文章全体にわたって他にも誤謬(恐らくシベリウスに関しては全くないと思いますが)がないか疑惑を持たざるを得ない(指揮者の大友直人氏ほどの人が気づかなかったのだろうか)。二点目は、以上のように疑惑を待たざるを得ない伝記であるが故に、シベリウスだけでなく登場する人物の発言や色々なエピソードについて正確かどうか確認したいところであるが、発言やエピソードについての出典についての注が全く記載されていない点である。伝記である以上、事実に即して記述されるべきであり(その事実に対する評価なり解釈、或いは真偽のほどはまた別問題)、そのことを実証すべく、引用した部分はその出典を明らかにするのが筋というものである。であるのに、巻末に参考文献として14冊文献名が記載されているだけである。これでは「いい仕事」とは言えまい。例えば、松橋麻利の「ドビュッシー」やアレックス・ロスの「20世紀を語る音楽」などでは、引用した部分には必ずと言っていいほどに引用した書名とページ数、手紙なら日付まで記載し、読者が引用部分を確実に検証できるように編集してある。これこそが良識ある著述者の執筆態度ではないか(というか、執筆者というよりも、編集者の安易な姿勢が反映された結果かも知れない)。床屋談義に由来する雑談、雑文ならいざ知らず、日本では数少ない本格的なシベリウス伝だけにもったいない。第2版ではぜひとも修正していただきたい。最後に内容については、率直に言ってアレックス・ロスの「20世紀を語る音楽」第一巻のP167〜の「森から現れる霊ージャン・シベリウス