アメリカの反知性主義 の感想
参照データ
タイトル | アメリカの反知性主義 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | リチャード・ホーフスタッター |
販売元 | みすず書房 |
JANコード | 9784622070665 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治学 |
購入者の感想
恥ずかしながら、購入して、原著の発行年を見てたまげた。1963年!「何かの間違い?」ではなかった。それほど、年月を感じさせない著作である。ひとつは、現在のアメリカ・ブッシュ政権を支える「草の根保守主義」のルーツというか本質を、見事に描き出している点がある。レーガン政権や現ブッシュ政権を支える「草の根保守」というのは、公民権運動やフェミニズムなどのリベラル化への反発や、『アメリカン・マインドの終焉』あたりの感化と思っていたが、本書によって、それがある意味で建国以来の「反知性主義」と呼ぶべきものであることを学んだ。考えてみれば、アメリカ建国の理念のひとつは、ヨーロッパ的なヒエラルキー社会の否定であっただろうし、自由とともに平等の観念は、アメリカという国家の根幹なのである。そうした立場からすれば、知性だの、知識人だのは、うさんくさい存在ということになる。ところが、現実のアメリカは、そう単純ではない。一面的であることを承知でいえば、ノーベル賞受賞者数を考えても、この国が知性を敵視して凡庸をよしとしているとはとても思えない。現在のアメリカはかなりおかしいとは思うが、それでも、故サイードやチョムスキーをはじめとする、知性にまみれたような知識人も大勢いる。この複雑さがアメリカなのであり、本書は、その点を歴史的に描き出してくれている。すごい著作であると思うし、また、訳者の碩学を賞賛したい。