もうひとつのこの世《石牟礼道子の宇宙》 の感想

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参照データ

タイトルもうひとつのこの世《石牟礼道子の宇宙》
発売日販売日未定
製作者渡辺 京二
販売元弦書房
JANコード9784863290891
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

 『逝きし世の面影』の著者による『苦界浄土』の作者についての論集である。最も古いものは1972年の『苦界浄土』文庫本の解説であり、新しいのは2013年の書き下ろし文である。
 高山文彦の「お二人のこと」(『道の手帖 石牟礼道子』所収)によれば、現在86歳の、しかもパーキンソン病の石牟礼道子を、(ヘルパーは別にいるにしても)83歳の渡辺京二が、なにくれとなく世話をやいているという。以前から編集者としてかかわってきた習性かもしれないが、不思議な関係というべきだ。友人以上の存在、同志というべき仲なのだろう。
 40年も前の『水俣病闘争 わが死民』などをひもとくと、理想的な関係によって二人が繋がれているような気がするし、本書において著者自身こそばゆいがゆえに語れないこともあるかもしれない。だが『苦界浄土』をはじめ代表作いくつかについて鋭い考察がなされ、石牟礼作品の多くが未読の私にとって、これからも参考に読むことになりそうだ。
 なんとなく思うのだが、石牟礼道子という人は戦後日本の女性の作家のなかで最高の位置にいるのではないだろうか。私はまだ彼女の作品を読み始めたばかりだが、いろいろな意味でそう思う。たとえば樋口一葉、岡本かの子に匹敵する戦後の女性作家は探しにくいが、石牟礼道子を置けば、よく対峙しえる感じがする。この岡本かの子には岡本一平という協力者がいたのだが、かの子の小説に彼の筆が入っていることが研究によって知られている。だが石牟礼道子の原稿の多くを清書した渡辺京二は、確実にそうしたことをしていない。二人の書くものが全く異なるので、そうする意味がないのである。
 とはいえ渡辺京二は石牟礼道子から大きな影響をうけた。『逝きし世の面影』の「逝きし世」とは、「もうひとつのこの世」につながるだろう。

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弦書房から発売された渡辺 京二のもうひとつのこの世《石牟礼道子の宇宙》(JAN:9784863290891)の感想と評価
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