無名の人生 (文春新書) の感想

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参照データ

タイトル無名の人生 (文春新書)
発売日販売日未定
製作者渡辺 京二
販売元文藝春秋
JANコード9784166609826
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 死生観

購入者の感想

 「そもそも人間というものは黙って生きて、黙って死んでいくものだ」という言葉がこの本の言いたいことずばりと表現していると思う。常々インタビューなどで「人生に意味などない」と言い切る渡辺京二だが、その考え方をわかりやすく優しい言葉で語っているのがこの本だと思う。

 積極精神で成功しようという考え方、全ては幸せになるようにできているというような考え方、そいうものに若いうちは心酔したりするものだ。そういう状態に渡辺京二は警鐘を鳴らす。「この時代の象徴として、若者の過剰な自己愛があります。こういう自己愛は。「独りになる」こととは正反対のものです。「自己実現」「個性」「自分探し」などと盛んに言われますが、結局は、皆が「自己顕示に」汲々としているだけでしかない」と手厳しく切り捨ててしまう。また「出世など、自分から求めるものではない、ということ。全ての不幸は出世しようと思うところから始まるといってもいい。」この辺は禅の師家の発言のようである。

 しかしそのあとで社会に適応できなく苦しむ人たちに「就職ができないからた落ち込んだり、引きこもったりしている人たちに言いたい。いかに管理された社会、出来上がった社会であっても、みずから出かけていって自分の居場所を見つけてほしい。そこには必ず、自分に適した穴ボコがある。そいうニッチを発見し、あるいは創り出していくことが、世の中を多様にし、面白くすることになるはずです。」と自分も社会への適応に苦しんだ人独特の優しを見せる。
 
 景気がよくなってGDPが増加しなければ幸せにならない。そういう考え方かた抜け出すには、「現代を相対化して見ることが大事でしょう。その意味で、江戸時代には、たくさんのヒントが詰まっています。江戸の人々は、まずしくとも、幸せに生きるすべを知っていたからです。」と語る。『逝きし世の面影』は素晴らしい過去を描いてノスタルジックに日本の素晴らしさを強調したと理解され、石原慎太郎などエセ右翼に利用された感があるが、そもそも渡辺京二は現代を相対化するための材料として江戸時代を選んだのであり、そのことは渡辺が江戸と現代が断絶していることを前提に議論をしている。これを慎太郎たちは理解していない。

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