知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、英語の場合 (中公新書) の感想
参照データ
タイトル | 知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、英語の場合 (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 黒木 登志夫 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121021090 |
カテゴリ | 人文・思想 » 言語学 » 日本語・国語学 » 日本語研究 |
購入者の感想
文系と理系の違い、日本語の特徴、世界言語としての英語(Globish)、科学研究の論文執筆とプレゼンテーション、研究費の申請と評価、コンピュータの活用法、データの整理法、Wikipediaをはじめとするインターネットの情報源などの広い範囲を網羅した本。全242ページで科学者らしい明解な文章なので、通読は容易ですが、章ごとが独立しているので、個々人の興味のある章のみを読んでも有益です。参考文献は、医学関係にとどまらず広い範囲に及んで丁寧に記載されており、興味のあるテーマを深く探求したい読者には便利です。生物医学領域に携わる研究者にとって、必要な知識が幅広く書かれているので研究の初学者には、特にお薦めですが、トップレベルの研究者を含むどのレベルの研究者にとっても実用性のある、あるいは薀蓄としてもっておきたい情報が含まれています。多様な人物が引用されているのも本書の魅力で、宮澤賢治、マーク・ピーターセン、大江健三郎、寅さんから、著者の東北大医学部の後輩にあたる医師で現在弁護士として活躍中の水澤亜紀子博士にまで及んでいます。その他、文系と理系の収入の違いや、フランス人が日本人や韓国人の使うGlobishのほうが、英国人やアメリカ人の英語に較べて、意思疎通ができやすいことに気がついた話などは、薀蓄として知っておきたい小話でニヤリとさせられる読者も多いのではないかと思われます。ネットを使った新しい情報やコンピュータを使った英語の研究発表方法を書いている著者ですが、本書のなかで、本人が60歳で東大を定年してからコンピュータ(ブラインドタッチも含む)をはじめた話や、著者が英語のリスニングが現在でも時に困難であることなどを、包み隠さず書いていることに驚く読者も多いと思われ、世界的研究者である著者本人の体験を学ぶことが一番の本書で得られる薀蓄ともいえます。