父と暮せば 通常版 [DVD] の感想

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参照データ

タイトル父と暮せば 通常版 [DVD]
発売日2005-06-24
監督黒木和雄
出演宮沢りえ
販売元バンダイビジュアル
JANコード4934569622419
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドラマ

購入者の感想

「生きているのが申し訳のうてならん」
娘の痛切な言葉が、記憶に新しい事件の生存者の言葉と重なった。
JR福知山線での電車脱線事故で、生還した被害者が同じような言葉を口にされた。しかも、それは1人や2人ではないという。
原爆と事故、背景は違う。しかし両方とも、勿論生き残った人に責任があるわけでは無い。周りの人が、そして当人がそれを分かっていても割り切れない複雑な感情が、人には存在する。不謹慎なことではあるが、現実的にそれがあることが分かってからこの映画を見て、『父と暮らせば』のリアルさを実感した気がした。
そんな、亡き人への罪悪感から、幸せになることを禁じ、恋から目を背ける娘の前に現れた、恋の応援団長こと父の幽霊。彼は幽霊“らしく”ない。ひょうきんで感情的で、料理もする。娘もまた彼を幽霊らしくないことを感じているのだろう、お茶や饅頭を食べられないと言われ、思い出したように「そうじゃったな」と言う。そんな娘も、父の表情も寂しそうだ。
父は、娘の恋を成就させるためだけに現れた。彼の願いはただ娘が幸せになることで、それは原爆の火災から娘を逃がしたあの日の、「お前が逃げんゆうんなら、わしゃ今すぐ死んじゃるど!!」という言葉にすべての感情が表れている。
あの日の別れは、納得の上でとはいえ、お互いにとって辛いものだった。こんな別れは二度と繰り返してはいけない。だからこそそれを末代まで伝えるのが、生き延びた者の役目だ。
それこそが、作者の井上ひさし氏の最も伝えたいことなのだろう。
それは原爆だけでなく、あの事故についても同じことだ。
重いテーマだけに、ともすればだれてしまいそうなムードを、原田芳雄の飄々とした演技が払拭している。終始感情を抑えていた宮沢りえの、最後の笑顔もまた素晴らしい。
こういった、演出を抑えた、脚本と演技力が重点を占める映画は、もっと評価されてもいいと思う。

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