北の海〈下〉 (新潮文庫) の感想

久々にまとまった時間ができたので集中して読書をしました。先日紹介した七帝柔道記から派生した一連の本です。まず井上靖の浪人、四高柔道部の青春を描いた「北の海」を読みました。ひたすら寝技に持ち込む独特の柔道とそれに打ち込む青年たちの一途な生活を井上さんらしく淡々と活写しています。実はこの作品は井上靖の自伝的3部作の3番目に当たる作品で、小学生時代の祖母と生活を描いた「しろばんば」中学時代の悪童たちとの交流を綴った「夏草冬濤」から繋がっています。今から90年ほど前の学生生活ですが、本質的なことはあまり変わらず、悪さもすれば恋もあり、楽しく読める作品に仕上がっています。祖母たちとの交流も丁寧に描かれており、登場人物たちの温かみが伝わってきて読後感も良いです。時間があれば時系列で読んで行くと人間関係もよく理解できます。小学校や中学の教科書にも掲載され、推薦図書にもなっています。