ウィトゲンシュタインの講義 ケンブリッジ1932-1935年 (講談社学術文庫) の感想

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タイトルウィトゲンシュタインの講義 ケンブリッジ1932-1935年 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
販売元講談社
JANコード9784062921961
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門

購入者の感想

ウィトゲンシュタインの初期の代表作『論理哲学論考』と後期の代表作『哲学探究』を繋ぐ重要講義の翻訳である。翻訳は『論考』(岩波文庫)を手掛けた野矢氏である。訳は素晴らしく、各講義には見出しが付いていて、検索に便利である。
本書の核心的主張は、語の意味が規則を決めるのではなく、規則が語の意味を決めるということである。チェスの場合、駒の動かし方がゲームの規則を定めるのではなく、ゲームの規則が駒の動かし方を決めるということだ。「~~P=P」という数学的命題の意味を決めるのは論理学の規則である。この数学的命題は、「否定の否定は肯定」、すなわちPではないを否定するとpになるという意味であるが、~~という論理規則の使用が、Pの意味を決めるのであって、最初からPの意味が決まっていたのではない。したがって言語の使用が規則に従って為された場合、それは、言語ゲームになるのである。言語ゲームの規則とは、状況・文脈(コンテキスト)を踏まえて、それに適合するように、言語を用いることである。それが言語ゲームの規則なのだ。規則を逸脱して用いられた言語の意味はナンセンス(無意味)になる。本書で語るウィトゲンシュタインの講義は、言語ゲーム論であり、既に後期の思想である。講談社学術文庫では、本書と併せて『数学の基礎編』も出版されている。古書で入手することが可能である。後期ウィトゲンシュタインを知りたい人には必読の文献だ。講義なので、比較的読みやすく、しかも話は面白い。お勧めの一冊だ。

この本はウィトゲンシュタインの講義を聴講した編者らがウィトゲンシュタインの講義ノートなどを交えながら文章化したものであり、決してウィトゲンシュタインの著作などではない。

本書はウィトゲンシュタインの考え→編者の解釈→訳者の解釈→読者の解釈と何重もの解釈が入ってしまい、あくまで参考書程度で読むのが無難か。

この本の中に貫かれているメッセージは「常識を疑え」ということであろうか。

1+1=3は間違えで、1+1=2で「なければならない」という具合に「〜でなければならない」と私たちは考える。それが常識である。
黄色の色見本を誰かに見せて、「これと同じ色のものを持って来て」とその人に対して机の上にあるレモン、リンゴ、キュウリを指差す。もしリンゴを持ってきたら、私たちは「違うよ、レモンでしょう」と普通言うであろう。
対応に関して、星型3つと円形2つあった場合、星型が1つ余分と考えてしまう。

でもそれぞれがいろいろなゲームであると考えるとその常識は崩れる。
ある人にとっては1+1=3という規則のゲームなのかもしれない(そもそも1とは何か。「=」のうしろに来るものの意味は何か?)。
黄色の色見本を見てリンゴを選んだのはその人にとっての規則なのかもしれない。
一対一対応ではなく、星2つと円形1つの対応もありという規則も考えられる。

要するに「答え(1+1の答えは2、黄色はレモン、対応は一対一)は先になければならない」「答えはもともとあるもの」という常識を打ち破ろうとしたのがウィトゲンシュタインなのだ。

本書は『論考』なんかに比べると断然読みやすい(ただし読みやすいとわかりやすいは別問題)。
しかし分厚く、全部読むのに1ヶ月以上かかった。ボリュームがあるため、議論のつながり、関連性をつかむのがかなり難しい。
卑近な例を多用しているが、あまり明確な結論を出していないところが多くてわかりにくい。

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