愛に乱暴 の感想
参照データ
タイトル | 愛に乱暴 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 吉田 修一 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784104628063 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » や・ら・わ行の著者 |
購入者の感想
一作ごとに新しい世界を見せてくれる吉田修一氏の今度の新作はタイトルからして思わせぶりです。
東京近郊、夫の実家の離れに住む結婚8年の専業主婦。美人でよく気がつき努力家でもある桃子は週一回カルチャーセンターで教えています。しかし、夫が愛人をつくって離婚を言い出すとたちまち結婚生活に暗雲がたれ込めます。義父の入院と義母との確執も加わって次第に追い詰められた桃子は意外な行動に走るのでした。
「騙したのは妻か?夫か?やがて読者も騙される」と帯にあるので身構えて読みました。すべて桃子の一人称で語られるのですが、これも吉田修一氏の新しい試みです。おまけに桃子の日記が頻繁に挿入されています。改行なしの思い詰めた言葉が並ぶ日記がこの作品では重要な役割を果たしています。夫の浮気、姑との確執、離婚話と並ぶと世俗にまみれた昼ドラの世界ですが、さすが世界各国で翻訳されている注目の作家は違います。巧みな桃子の心理描写で読者を惹き付け意外な結末を示して終わります。
小説において先の展開が読めないのは読む側にとって大切なことですが、吉田氏の作品のほとんどが結末を予想できないところに非凡さを感じます。加えて吉田氏の文章のうまさに改めて感心しました。次第に追い詰められて、昂まっていく桃子のリアリティあふれる心象表現。全編を覆う不調和感あるいは不安感は通奏低音のように響いてドラマを盛り上げています。彼の卓越した文章力があってこそ成立する作品でしょう。
私は注意深く読み進めたつもりでしたが途中で重要な勘違いに気がつきました。あやうく騙されるところでした。
東京近郊、夫の実家の離れに住む結婚8年の専業主婦。美人でよく気がつき努力家でもある桃子は週一回カルチャーセンターで教えています。しかし、夫が愛人をつくって離婚を言い出すとたちまち結婚生活に暗雲がたれ込めます。義父の入院と義母との確執も加わって次第に追い詰められた桃子は意外な行動に走るのでした。
「騙したのは妻か?夫か?やがて読者も騙される」と帯にあるので身構えて読みました。すべて桃子の一人称で語られるのですが、これも吉田修一氏の新しい試みです。おまけに桃子の日記が頻繁に挿入されています。改行なしの思い詰めた言葉が並ぶ日記がこの作品では重要な役割を果たしています。夫の浮気、姑との確執、離婚話と並ぶと世俗にまみれた昼ドラの世界ですが、さすが世界各国で翻訳されている注目の作家は違います。巧みな桃子の心理描写で読者を惹き付け意外な結末を示して終わります。
小説において先の展開が読めないのは読む側にとって大切なことですが、吉田氏の作品のほとんどが結末を予想できないところに非凡さを感じます。加えて吉田氏の文章のうまさに改めて感心しました。次第に追い詰められて、昂まっていく桃子のリアリティあふれる心象表現。全編を覆う不調和感あるいは不安感は通奏低音のように響いてドラマを盛り上げています。彼の卓越した文章力があってこそ成立する作品でしょう。
私は注意深く読み進めたつもりでしたが途中で重要な勘違いに気がつきました。あやうく騙されるところでした。