反転する福祉国家――オランダモデルの光と影 の感想

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タイトル反転する福祉国家――オランダモデルの光と影
発売日販売日未定
製作者水島 治郎
販売元岩波書店
JANコード9784000244664
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

オランダといえば、フレキシキュリティとよばれる正規非正規の区別なく同一労働同一賃金を達成し、ワークシェアリングによる低失業率と高い成長率を確保し、かつワークライフバランスまでも目指したモデルが有名である。
今や非正規雇用が3割に達し、格差拡大にあえぐ日本からすれば、理想のモデルといっていい。
本書では、オランダ病と呼ばれた低迷する1980年台のワセナール協定に始まる大改革、すなわち「給付所得より労働」、生活保護を改革し受給者の就労支援を目指した雇用・生活保護法、非正規労働の正規化、パートタイム・フルタイム労働の差別禁止などなど、かつては日本と同様の男は外で働き女性は家庭に入るというモデルを改革していく過程が詳細に示される。

ところが本書によれば、こうした光の一方で移民に対する厳しい姿勢にみられるような、影の部分も目立ちつつあるという。
すなわち、フォルタイン党による移民の福祉タダ乗り論と移民制限・治安強化への熱狂的な支持をきっかけに、当時の政権党も移民制限へ政策転換を図った。その後、イスラム社会における女性差別を批判した映画「サブミッション」の監督ファン・ゴッホが殺害される事件をきっかけに躍進したウィルデルス党の躍進とEU憲法否決などをへて、移民排除の姿勢をいっそう強めているという。

これを著者は、労働や市民生活への積極的参加を市民に求める参加型社会に移行していく中で、女性や高齢者も含む多様な人々の参加を求めて「包摂」しつつ、同時に参加の見込みが薄いとされる移民を排除の対象とする方向にシフトしていると見事な分析をしている。

オランダに限らず内向き志向を強める先進国。
加えて、著者が最終章に書いているとおり、日本にも「KY」や「コミュニケーション能力」という切り口で、特定の人を排除うする傾向が強まりつつある排除の論理が見え隠れする。

オランダモデルを決して理想とせず、その影に注目して、新たなモデルを模索するための貴重な一冊である。

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