桜の園 (ワイド版岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル桜の園 (ワイド版岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者チェーホフ
販売元岩波書店
JANコード9784000073073
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 戯曲・シナリオ » ロシア

購入者の感想

この手の海外文学は新しく訳されるたびに
文章と感動のレベルが下がっていくのが常ですが
この小野さんの「桜の園」の訳は違います。
非常に読みやすく、各登場人物に感情移入が出来る作品になっています。
文体は丸みを帯びた暖かい感じであり、桜の園消失の存亡の中にも
自分のペースを失わずに生きている少し哀しくて可笑しい人々が生き生きと描かれています。
桜の園本来のコメディの趣旨を生かした日本語訳としては
多分唯一のものではないでしょうか?
訳者のあとがきを読むと全登場人物と作品に対する愛情がひしひしと感じられ
この作品の登場人物の生き方も欠点もその人物の個性と愛着を持って語り
訳されている台詞は登場人物の感情を良く吟味して訳されているように見受けられます。
通常は没落地主の悲劇性を強調する解釈が多いのですが
この訳文ではむしろ新しい時代に旅立っていく人々の明るい未来が垣間見えます。
そうした新時代の幕開けの中で90近い執事のフィールスが桜の園に留まるラストは泣けます。
各人が新しい人生の旅立ちの為に駅に出かける中で
桜の園を人生の終着駅にしなくてはならない老人のぼやき。
この訳文で初めて涙が出たシーンでした。

小野さんは「ワーニャ伯父さん」も訳されておられますが
是非「かもめ」「三人姉妹」も訳して欲しいものです。

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