怒り(上) の感想
参照データ
タイトル | 怒り(上) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 吉田 修一 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784120045868 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド |
購入者の感想
殺人者を追求する刑事と様々な人間模様、それが交錯し、ひとつの焦点を結ぶのが楽しみです。登場人物と場面が次々に転換されていくので、読者は注意深く話の流れを追いかけていく必要に迫られます。一気に読める作品ではありません。吉田修一の作品は『パークライフ』以来です。複雑な人間の心理とその変化に迫るこの作品で成熟を遂げています。人間の不可解さこそ、文学や小説のテーマです。ミステリーの場合は謎解きが中心であり、すべてが解決するように構成されていますが、本書は読めば読むほど謎が深まるように構成されています。まさに秀逸な文学作品です。姿を変える犯人と巻き込まれて混乱する人間模様、今後の展開が楽しみな小説です。もう一つ、この作品の面白さは、登場人物の設定にあります。ゲイ友達二人、逃げる女と子ども、漁師の家族など、一見平凡な設定に見えますが、どの人物たちも心に悩みを抱えてぎりぎりの状態で生きている。このような設定が殺人事件と不思議にシンクロする空間に本書を読み味わう妙味があります。ぜひ、じっくりと読み味わって下さい。