ポケットに外国語を (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトルポケットに外国語を (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者黒田 龍之助
販売元筑摩書房
JANコード9784480431141
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 言語学 » 言語学

購入者の感想

 中1で英語を習い始めて以来、外国語はからきしダメである。どのくらいダメかというと、今年の夏、パリで、ほろ酔い気分でホテルに戻った時、フロントデスクにいたスタッフにいきなり「オーヴォワール」とやらかした。相手は、さぞビックリしただろうけれど ― 何しろ入ってくるなり「さよなら」ですから ― 笑いもせず、しかし心なしか語気を強めて「ボンソワール」とこたえてくれた。そのくらい語学音痴である。
 その私が読んでも、本書は異常なまでに面白かった。一気読みしながら、読み終わるのがもったいないと思った本は久しぶり。
 中でも、著者が自分の来歴と外国語との関わりをふり返った最終章は圧巻。また、「世間の無責任な意見と、それに素直に同調する文部科学省の新指導要領によって」「高校では『英語は英語で教える』ようになった(p.190)」ことを批判する「英語は英語で?」は、学校での英語教育に関心がある人ならばぜひ読むべき論だと思う。
 とにかく、ことばが好きで好きでしかたがないという著者の思いが、すべてのページから滲み出てくる。何かが好きで好きでしかたがない人が、それについて書いた本は面白いに決まっている。

【結論】
最近の黒田本の中で、最も内容の濃い1冊。推薦度大。

【説明】
5年くらい前に購入した「ポケットいっぱいの外国語(2007/06)」に、今般、書き下ろしを加え(増量)て文庫化したものだというので、取り寄せて読んでみると、確かに書き下ろしの分量は意外に多いようだ。読んだ記憶がない章が多い。

私事になるが、その5年間に生涯学習中のドイツ語に加えて、著者のロシア語入門書を3冊購入してロシア語とスペイン語にちょっかいを出し、露・西はすぐ中断したが(それでもオホーツク沿岸の街の商店に時々あるロシア語看板や、ロシア船の船名くらいは読める)、仏語は3年以上併習中、それに加えて今秋から英語のボランティア家庭教師を始めたことから大学入試のとき以来、40何年かぶりで自主的に英語を勉強しはじめた。

そんなわけで、本書の趣旨(ポリグロット志向)に100%納得、かつ、特に我が国における英語の問題点について深く同感の1冊であった。 多言語併習については別項に譲り、以下、英語教育問題に絞って著者見解を私なりに解説する。

近年、国内の大学(しかも低偏差値校まで)で、日本人教官が日本人学生に英語の時間でもないのに英語で講義をしたり、企業でも日本人だけなのに英語で会議をやってみたり、日本語も覚束ない小学生に英語を教え込んだりと、間抜けた「英語ゴッコ」が日本中で流行ってきたという。 私の職場の新卒社員に聞くと、やはり日本人教員が英語で喋る講義があって全く理解できなかったそうだ。そもそも日本語で聞いても理解困難な大学の講義(お互い、何年か何十年か前を思い出してみれば、わかる)を英語でやって、なんの意味があるのか。教官が日本人だろうがネイティブだろうが同じことだ。まだしも、日本式発音のほうが分かり易いとは言えようが。

著者によれば、こんな阿呆講義への学生の対抗法は「寝る」だという。先生も生徒も、どちらも被害者だ。

【以下は私見】
小学生に英語を教えるのも愚の骨頂。 英語が偉いと勘違いした、半端英語屋が増えるだけ。 子供に「外国語」について教えるべきことがあるとすれば、実用英語入門のような志の低いことではない。

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