男子の本懐 (新潮文庫) の感想

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タイトル男子の本懐 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者城山 三郎
販売元新潮社
JANコード9784101133157
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

激動の時代。国際情勢が急速に変化し、国内では政党政治が行き詰まりを見せていた時代。世相が混沌とする中、緊縮財政・金解禁という困難な施策に邁進した気骨ある政治家(浜口雄幸、井上準之助)の動向を追う。「静」の浜口と「動」の井上のコンビ。二人は信念を貫くが、不穏な時代、ともに凶弾に倒れることになる。

高校生のときに本書に出会い、非常な感銘を受けた。本書で描かれている浜口・井上それぞれの生き様に「男子の本懐」を強く感じた。自分の進路にも影響したと思う。

行政で働き、様々な役人や政治家を見てきた今、改めて本書を読み返した。
読み返してみて、率直に言って違和感を覚えずにはいられなかった。
浜口・井上、いずれの描写についても、あまりに大衆小説風なのだ。はっきり言ってしまえば、身近な人たちが書いた「あの人はいい人だった」的なものを張り合わせたような印象だ。

二人がなぜ緊縮財政・金解禁にあれほどの情熱を傾けたのか、
当時、国際情勢・国内情勢についてどういう認識だったのか、
そこにどんな苦悩があったのか。

本書では基礎的なデータもほとんど示されていない。
緊縮財政の中でもどういう視点から何にウェイトを置こうとしていたのかも描かれていない。
井上が家族に宛てた手紙や浜口のエッセイ的な「随感録」がやたらと引用されている。
両者の心情は伝わるが、両者の政治家としての信念に関わる部分は伝わってこない。後藤新平が浜口のどこをどう評価したのかも、浜口がなぜ政治家に転身し、どのような国家観を描いていたのかも伝わってこない。

また、本書では、浜口・井上が去った後、高橋蔵相の下で政策転換が行われ、急速に日本経済が立ち直ったことについて、ほとんど描かれていない。

著者が浜口・井上を題材に「政治家としての信念を貫き通すこと」について描こうとしていたのなら、本書は中途半端に終わっている。

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