Mig Killers: A Chronology of U.S. Air Victories in Vietnam 1965-1973 の感想

　本書はアメリカ側資料を基に、全ミグ戦闘機撃墜録としたものです。ファントム戦闘機による撃墜は当然の如く収録され、サンダーチーフやクルセイダーなどの戦闘爆撃機による勝利、スカイレーダーとストラトフォートレスの防御銃火による戦果までも含んでいます。
　それらが、年代と曜日ごとに並んでおり時系列をおって行くことが可能です。加えて、上記で紹介した機体、もしくはパイロットのカラー写真も同時に掲載されており、モデラーの心を擽る内容であります。
　Ａ−１ＨとＢ−５２での撃墜を取り上げるにしても、戦果は僚機の〇○中尉が確認した等々・・・ベトナム航空戦を語る上で欠かせない内容です。巻末には曜日、機体、兵装、氏名、撃墜機体などを表にしたものもあるため、資料性を一段と高めています。
　しかし、残念な点があるのも事実です。第一に、ベトナム航空戦で、何故米軍はベトナム空軍を殲滅出来なかったのかは触れられていません。この辺りは事前に調査済みなのが前提といえます。
　第二に、あくまでアメリカ側のみの記録であり、ベトナムなど東側の記録参照は一切ありません。そのため事実を確認するためには、オスプレイ本をはじめとするクロスチェックが必要です。簡易的に参照したいのであれば「世界の傑作機７６　Ｍｉｇ−２１　フィッシュベッド」をご覧いただくのもいいやもしれません。ベトナム戦争における空中戦記録が全て掲載されています。
　世界の傑作機を参考にする限り、Ｂ−５２の撃墜戦果は全部誤認であり、爆撃機の戦果報告過剰は第二次大戦以降の伝統であったのを再確認される可能性が強いといえます。