風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア) の感想

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参照データ

タイトル風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)
発売日販売日未定
製作者世阿弥
販売元角川学芸出版
JANコード9784044055011
カテゴリジャンル別 » アート・建築・デザイン » 日本の伝統文化 » 歌舞伎・文楽・能

購入者の感想

 世阿弥の手による『風姿花伝』の全現代語訳である。
 一言でいえば、完璧である。原文、現代語訳、解説が付され(さらには校訂による異同も巻末に記されている。)、不足するものがない。訳者が中世日本文学と能の研究を専門にしており、『風姿花伝』の本文の原文批評が厳密で、現代語訳の信頼性が高い(出版年が新しく、最新の研究成果が反映されている点も魅力である)。校訂を経た原文も掲載され、注釈もついているので、世阿弥の生の教えにも接することができる。文庫レベルとしては、極めて質が高い。
 ところで、『風姿花伝』は、能に関する演劇論であるが、その価値はそれにとどまらない。知識人による演劇についての考察は、古代ギリシャなどに例はあるものの、前近代において、演劇を生業としていた者の手による演劇論が著されたというのは世界的にも類を見ないという。これは、古来、演劇を生業とする者は卑しい身分とされ、識字能力を持つ者がほとんどいなかったからである。演劇を実際に行う立場から書かれた古典であるだけに、『風姿花伝』の演劇論としての価値は、他の演劇論の古典とは比較にならない。まさに世界に誇れる古典なのである。世阿弥の作が今もなお、少なからず演じ続けられていることを思うならば、『風姿花伝』はまさに文字通り現代にも通用する演劇論である(たとえば、世阿弥は、「能の作品もよく、役者の演技もよいのに、低迷する時期がある。このような場合にどうすべきか。」という問題について論じているが、役者であればこそわかる問題である)。
 私は、一人でも多くの日本人が、この世界に誇る演劇論の名著を紐解くことを願っている。

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角川学芸出版から発売された世阿弥の風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)(JAN:9784044055011)の感想と評価
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