御嶽山 静かなる活火山 の感想
参照データ
タイトル | 御嶽山 静かなる活火山 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 木股 文昭 |
販売元 | 信濃毎日新聞社 |
JANコード | 9784784071395 |
カテゴリ | ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 地球科学 |
購入者の感想
てっきり昨年の噴火を受けて書かれた本かと思ったがさにあらず、第一版は2010年に出ていた。道理で、グラビアと前書きで昨年の噴火について触れられているものの、本文ではほとんど言及がない。この点は実にもったいない。
しかし、近年の地道な研究から明らかになった過去1万年の御嶽山の活動史、2007年小噴火の仕組みに関する仮説、噴出物や温泉にマントル由来の物質が異例に多く含まれていること、地下50kmから熱い物質がつながっているらしいことなど、御嶽山という火山についての興味深い知見がちりばめられており、今後の活動を予測する上でもヒントになりそうだ。
さらに、公的機関の経費削減の結果として各地の火山で観測体制が縮小している実態、「気象庁の火山担当職員を大学院に留学させて火山学を学ばせては」という著者の提案が気象庁から一蹴されたというよく考えるとぞっとするような挿話などから、日本の火山噴火予知の現状が静かに告発されている。国は「研究価値の大きい火山」だけ観測体制を充実するのだそうだ。「価値がない」とされた火山は怒りまっせ。
終章では、王滝村と高山市という二つの地元自治体に目を向け、地方の衰退が防災力の衰退につながっていることが浮き彫りにされる。市場原理主義が地方切り捨てになることは頭では理解できていたが、事実に基づいて語られると暗澹たる気持ちになった。
現場に長年身を置いて火山と地域の人々とに誠実に向き合ってきた人ならではの本だ。
しかし、近年の地道な研究から明らかになった過去1万年の御嶽山の活動史、2007年小噴火の仕組みに関する仮説、噴出物や温泉にマントル由来の物質が異例に多く含まれていること、地下50kmから熱い物質がつながっているらしいことなど、御嶽山という火山についての興味深い知見がちりばめられており、今後の活動を予測する上でもヒントになりそうだ。
さらに、公的機関の経費削減の結果として各地の火山で観測体制が縮小している実態、「気象庁の火山担当職員を大学院に留学させて火山学を学ばせては」という著者の提案が気象庁から一蹴されたというよく考えるとぞっとするような挿話などから、日本の火山噴火予知の現状が静かに告発されている。国は「研究価値の大きい火山」だけ観測体制を充実するのだそうだ。「価値がない」とされた火山は怒りまっせ。
終章では、王滝村と高山市という二つの地元自治体に目を向け、地方の衰退が防災力の衰退につながっていることが浮き彫りにされる。市場原理主義が地方切り捨てになることは頭では理解できていたが、事実に基づいて語られると暗澹たる気持ちになった。
現場に長年身を置いて火山と地域の人々とに誠実に向き合ってきた人ならではの本だ。