密林の語り部 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 密林の語り部 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | バルガス=リョサ |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003279632 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » スペイン文学 |
購入者の感想
3年前、出版時にこの本を購入して読み始めたが、第3章で挫折した。
それまで興味深く読み進めてきたものが、第3章に入って、とつぜん、何が書いてあるのか、まったく理解できなくなったのだ。
それは衝撃的なほどの分からなさだった。
いま思えばそれは、文明の視点から未開部族の視点に、物語が移ったためであった。
その後私は、宗教学に興味をもち、先住民の文化や宗教にも少しは親しむようになった。
そうした考えが少しは理解できるようになって、先日、この本を再び読み始めたのであるが、今度は、第3章が、圧倒的な世界として私の前に現れてきた。
それはまさしく、文明以前の、「野生の思考」と呼ぶべきものであった。
一般に、バルガス=リョサは、ガルシア=マルケスなど他のラテンアメリカ文学とともに、「魔術的リアリズム」と称されている。
じっさい私は、ガルシア=マルケスの奔放な想像力に、野生の原始的なエネルギーを感じたつもりでいた。
だが、この「密林の語り部」を読んで分かったのは、ガルシア=マルケスの魔術的リアリズムでさえ、文明という枠組みにどうしようもなくふちどられたものである、ということだった。
われわれ文明人にとって、魔術的リアリズムは、じつはすごく分かりやすい。妖精物語のようなスペクタクルとして、安心して楽しめる。
しかし、「密林の語り部」はそうではない。文明人の思考様式、そして文明人の存在そのものが、グラグラにされるのだ。
バルガス=リョサは、真に反文明的なものをわれわれに突きつける、恐ろしい作家なのである。
それまで興味深く読み進めてきたものが、第3章に入って、とつぜん、何が書いてあるのか、まったく理解できなくなったのだ。
それは衝撃的なほどの分からなさだった。
いま思えばそれは、文明の視点から未開部族の視点に、物語が移ったためであった。
その後私は、宗教学に興味をもち、先住民の文化や宗教にも少しは親しむようになった。
そうした考えが少しは理解できるようになって、先日、この本を再び読み始めたのであるが、今度は、第3章が、圧倒的な世界として私の前に現れてきた。
それはまさしく、文明以前の、「野生の思考」と呼ぶべきものであった。
一般に、バルガス=リョサは、ガルシア=マルケスなど他のラテンアメリカ文学とともに、「魔術的リアリズム」と称されている。
じっさい私は、ガルシア=マルケスの奔放な想像力に、野生の原始的なエネルギーを感じたつもりでいた。
だが、この「密林の語り部」を読んで分かったのは、ガルシア=マルケスの魔術的リアリズムでさえ、文明という枠組みにどうしようもなくふちどられたものである、ということだった。
われわれ文明人にとって、魔術的リアリズムは、じつはすごく分かりやすい。妖精物語のようなスペクタクルとして、安心して楽しめる。
しかし、「密林の語り部」はそうではない。文明人の思考様式、そして文明人の存在そのものが、グラグラにされるのだ。
バルガス=リョサは、真に反文明的なものをわれわれに突きつける、恐ろしい作家なのである。