ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来 の感想

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タイトルユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来
発売日販売日未定
製作者小川 進
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492533352
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購入者の感想

商品開発に悩んでいるメーカーの方々に読んで欲しい。そう思う本でした。

メーカーが独占していた(と信じられていた)製品革新の主導権は、消費者に移りつつありますよ。それもマーケティングリサーチを通じた「参加」「協力」レベルではなく、
実際に製品を作ってしまったり、ときには会社まで設立してしまうという「主体的な」レベルの活動にまできてますよ。
さあメーカーのみなさん、どうしますか? 筆者はそう問いかけているように感じます。

これに近いことは、プラハラードのコ・イノベーションやトフラーのプロシューマーなどでも語られています。ただそれらはいくつかの現象から感じ取った「予言」であった
ため、企業としては「じゃあどうすればいいの?」「いつかはそうなるかもね」という感想を持つしかなかったように思います。しかし本書では、筆者も含めた世界中の研究
者たちが積み重ねてきた豊富な研究結果をベースとして議論されている点ため、ただの「予言」ではなく、現実に進行しているユーザーイノベーションの世界を、よりリアル
に、より詳細に、そしてわかりやすく知ることができます。そして終章を読むと、メーカーの商品開発担当者がこれからやるべきことがうっすらと見えてくるように思います。
簡単に言えば、ユーザーの工夫や改良を侮る事なかれ、うまく取り込めでしょうか。

個人的に面白かったのは第7章。筆者と、ユーザーイノベーション研究の祖であり、筆者の師でもあるMITのヒッペル教授が、この分野の研究史を語っているのですが、やりと
りの内容はまさにメーカーの製品開発者の思い込みやジレンマを鋭く、そして鏡のように映し出しているようでした。

非常に読みやすいけれど、内容は深いので、商品開発担当者の人は読んでおいて損はないと思います。

私自身、企業のモノづくり過程に関わる中で消費者調査を実施することも多々あり、消費者の声を製品開発に反映される過程を見てきたつもりでいた。(もちろん、結果的に全然消費者の声を生かせていていない実例も見てきたが・・・)本書を読む前は、ユーザーイノベーションは消費者調査の延長線上じゃないのかな、と思っていた。
しかし、消費者調査や(もちろんかなりターゲットを絞った調査、行動観察調査も含めて)、その他の「顧客の声を聞く」企業行動と、本書で取り扱われているユーザーイノベーションは全然違うものなのだ、いうことが分かったと同時に、ユーザーが起こし得るイノベーションをどうすれば企業は自社の事業チャンスとして活かせるのかについていくつかの気付きが得られた。
また本書の中に「イノベーションの民主化」というキーワードが出てきているが、それを事業化して流通させる企業の事例を拝見すると、21世紀の「社会の公器」と言える企業のあり方ってこういうことなんじゃないか、と少し考えさせられた。
「最近、自分の会社の製品って本当に社会から求められているのかな。」ということに自信がなくなってきている人(例えば私)には必見の著ではないかと思う。

私は個人的に、C.アンダーソンの"MAKERS"に代表されるいわゆる、Makerムーブメントに強い興味があり、MakerFaireなどにも積極的にかかわっているのですが、その過程で、Arduinoに代表される、コミュニティを伴った「技術の民主化」が、いかに大きな意味をもつか、を痛感しました。これらは、私を含め、技術偏重の人にとっては、「技術的にたいしたことない」で片づけてしまいそうになるのですが、「技術が民主化してユーザの幅が広がる」ことの意義・インパクトは、巡り巡って技術の活性化につながることを強く意識するべきです。このような経験をしたところに、本書に出会い、経営学の世界では、このような「民主化」の概念が15年近く前から調査・研究され、その意義と限界が深く考察されていたことを知りました。Make界隈の人間にとっては、どうしてもMakerムーブメントが、ある日突然はじまったように思えてしまうのですが、その前の様々な分野での「助走期間」があったことは、多くの示唆に富んでいると思います。本書は、どうしても「イノベーション」、すなわち企業が製品をつくる、という方法での製品の世の中への出し方、というものがベースにありますが、個人が「イノベーション」をするやり方である起業に対するハードルが、以前よりも格段に低くなっとはいえ、いまだ強く存在することが、ユーザーイノベーションに対してどのような影響、効果があるか、すなわち「起業の民主化」または「起業せずにイノベーション」は可能か、可能ならばどのような可能性があるか、ということに、強い興味がありますが、おそらくまだ研究対象になっていないのでしょう、その点までは言及がありませんでしたが、その点を知ることができたことも、大きな収穫でした。

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