あの頃映画サントラシリーズ 皇帝のいない八月 映画オリジナル音楽集 の感想

台詞・効果音入りの復刻サントラCD（FJCM-007）も出ていますが、それを買った人なら
なおさらこのCDも買わないといけません。劇伴をほとんど網羅し、採録できなかった曲に
ついては理由を明記してある念の入れようです。編集に合わせて曲がフェードアウトした
りカットされてしまった部分も、このCDでは完奏に近いところまで収録してあります。
使用場面に添った曲名を付けたのに加えてMナンバーも表記。トラックごとの解説文では
場面で曲が流れるタイミングを説明する他、曲に対応するBDやDVDの時間表示まで書いて
あり、正に痒いところに手が届く凝りようです。佐藤勝のコメントを劇場パンフから採録
したり、出演者と役名の対比一覧を付けたりと、資料性も高いと思います。解説文に興味
深い小ネタを仕込むあたりも含めて、高島幹雄氏の仕事の手堅さはいつも通りでした。

音質は非常に優秀で、ソースの鮮度の高さに意外な驚きがありました。もちろん前述の復
刻CDとは異なり、台詞やSEがミックスされていないこともあって、聴き応えは十分です。
映像ソフトに付いた音声は歪みが多くて割れまくっていますが、そちらとは雲泥の差です。
34トラック、52分29秒収録。ボーナス扱いの駅内アナウンス５トラックを除いて、音楽は
全曲トゥルー・ステレオ・ミックスです。パッケージは通常のプラケースです。

まさか公開後36年を経てこんなものを聴けるとは想像しませんでした。物語の悲惨さはと
もかく、観客が長く支持した幸福な映画であり、自分は幸福な観客であったと感じました。