橋の上の「殺意」 <畠山鈴香はどう裁かれたか> (講談社文庫) の感想

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タイトル橋の上の「殺意」 <畠山鈴香はどう裁かれたか> (講談社文庫)
発売日2013-08-09
製作者鎌田 慧
販売元講談社
JANコード9784062776141
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

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娘である彩香ちゃんと近所に住む剛憲くんを殺害した犯人という情報より、畠山鈴香と聞いてテレビカメラに対して悪態をつく表情をまず先に思い出す人は多いだろう。
確かな事実は、彩香ちゃんが事故死として処理されていたところ、他殺の可能性があるとして警察に再捜査を依頼し、ポスターを貼って情報提供を呼びかけたこと、剛憲くんについては彼女が殺害したこと、彼女はひどい虐待を受けて育ち、解離性障害を持つこと。そして無期懲役が確定し、現在受刑中であるということだ。

友達が増えづらい性格、というものがある。人との距離感の取り方がちょっと違う人達だ。急に近づいたり、急に離れたり、ちょっと約束にルーズだったり、他人を責めたり。いずれにせよ、鈴香はそのようなタイプの人だった。仲間はずれにされ、教師からも見放された。そのタイプの人が、東北の田舎町でどのような息苦しさの中生きていたのか、想像に難くない。

「子どもを抱えたシングルマザーが、精神的な混乱の中で子どもを殺す」というのはもっとも現代的なテーマである。解離性障害による「健忘」の中身を、時間をかけて解明する裁判であれば、二人の子どもの傷ましい死を無駄に終わらせずに住むかもしれない。
鈴香の罪はもちろん重い。著者も罪をなかったことにしようとするものではない。しかし、「功を焦る検事も旧態依然の弁護しか考えられない弁護士も、裁判のスピード化の要求に応えようとする裁判所も、この事件の意味を掘り下げることはなかった」。マスコミはいつものように、稀代の悪女としてプライバシーを暴き「魔女狩り」を続けた。彼女の脆い精神は裁判を耐えうるものではなかった。

閉鎖的な地域で居場所を失いながら、それでもそこから出て行く術を持たない人が、さらにシングルマザーとして子供を育てる難しさを、私たちの社会は解決できるのだろうか。育児放棄や児童虐待のニュースは、当事者以外にとっては他人ごとなのだろうか。

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