悲嘆の門(上) の感想

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参照データ

タイトル悲嘆の門(上)
発売日販売日未定
製作者宮部 みゆき
販売元毎日新聞社
JANコード9784620108087
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

カバーには上巻とあったのですが、中身が下巻で、上巻を無くしたので購入しようとしていた私には不要のものが来てしまいました。しかし、ご連絡をしたところ、すばやく上巻送付の対応を取って下さり、「すぐに読み直したい!」と思っていた私にも大変有り難いものでした。最初のミスがあったので★5つにはできませんが、満足しています!

上下巻通してのレビューです。ご注意ください。
殺した後で死体の足指を切断するという奇怪な連続殺人が世間を騒がせている。
大学一年生の三島孝太郎は、ネット警備会社でアルバイトを始めたことから、事件に深く関わることになる。
分厚い上下二巻本も、読み始めるとあっという間だった。相変わらず凄まじい力量だ。読者を引っ張る力を計数化できたら、たぶん日本一なのでは。
読み終わるまで何も手につかない、ページをめくる手が止まらない。文句なしに面白いのだが、「本書は傑作か?」と聞かれると、返事に困る。
帯にヒントが出ているのでネタバレにはならないと思うが、白紙状態で読みたい人は、この先を読まないでください。

発端はどう見ても社会派ミステリなのだが、上巻の途中からファンタジーに変貌する。動くガーゴイル像の謎はいかに?
答え、生きてました。 ミステリマニアなら怒り出すだろう。実は過去に発表された某作品の続編なのだ。
私は宮部ファンタジーも好きだが、本作には木に竹を接いだような奇妙さを感じる。連続殺人の真相は、ミステリとしてかなり斬新だ。
殺人事件を通してネット社会の闇をじっくり描けば、『火車』『模倣犯』に匹敵する大傑作になったかもしれない。そう考えると惜しい気がする。
あと終盤に出てくる「良きもの」はどうかと思う。宮部さんの良心的な作風を敬愛しているが、これは甘すぎるだろう。
色々と不満はあるが、唐突な展開にも関わらず強引に読者を引っ張っていく腕力は、認めざるを得ない。読んでいるときは文句なしに楽しかったし。

この作品、もう、これまでの宮部さんは、遠くに行ってしまった感じがする作品です。
これまでに、ファンタジーミステリーも、数々ありましたが・・
これは、別物です。

前作の「英雄の書」の続編ですが、前作と対となる存在の本です。ですので、前作を読まないと理解しにくいというものではありませんし、前作の主人公の次なる活躍を描いたものではありません(ユーリの成長が見えますが、それを楽しみにして読むものではありません)。
今回のテーマは、「言葉」。
あなたが発する言葉は、自分が気が付かないところで蓄積し、増殖して、自分に振り戻ってきます。虚勢を張る言葉ばかり発している人は、それに等しい闇を抱えている。同情が過ぎる言葉を発している人には、その根源となる原罪が隠れている。言葉が、その人の精神を形作り、支配していくのです。無自覚的に。
物語と言葉。物語を語るために言葉を必要とし、言葉があるから物語は伝播し拡大生産される。どちらが先か、は鶏と卵のような関係でどちらとも対となる存在である。本書では、前作でいうところの「英雄」に陥ってしまう側の人間として、主人公が登場します。「英雄」に陥ってしまう人は、あまりに一面的にしか物事を見ることができず、自分の物語を紡ぐのではなく、他人の物語をなぞろうとしてしまうのだ。その主人公の危うい若さを指摘する、老練な元刑事(この人も足が悪い)も絡み合い、青臭い正義と人生の様々なあやを見てきた深くやりきれない洞察との対比も見事です。

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