形而上学入門 (平凡社ライブラリー) の感想

「形而上学入門」は、ハイデッガーの重要な講義録の一つ。平凡社ライブラリー版の本書では、1960年に理想社から刊行された『ハイデッガー選集』の中の一つを改訂したものに、ハイデッガーがナチスとの関係について弁明した「シュピーゲル対談」が付されています。

「形而上学入門」では、「存在の問い」を再発見するところから出発し、「存在」という語の語義解釈から、〈存在と時間〉というテーマの探究へとつなげる道筋が描かれます。特に、存在概念を、古代ギリシャ的なphysis−ousia−existentiaの三つの語義解釈から捉えなおす個所や、存在概念を四つの図式（存在／生成、存在／仮象、存在／思考、存在／当為）に置く個所には、ハイデッガーの独特な鮮やかさがあります。

『現象学の根本問題』という講義録も、哲学史をたどりながら「存在の問い」を探究するので、これと合わせて読むと理解が深まります。（『現象学の根本問題』は、2010年に木田元氏らが新訳を出しています）